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第8話
結果不幸にも体に力が入り内側からさらなる刺激がもたらされる。
「や…やめ…、ぁンン!ダメ…ダメだってばぁ…!」
「…可愛い声…」
布団の隙間から真の顔を至近距離でガン見する翼は顔を上気させハァハァと息をしていた。
「マコちゃん…誘ってる…?」
一体何が起こってる?
…多分、いや絶対にこのシチュはヤバイやつ…。
「…つ…ばさ…?」
恐る恐る問いかけてみるが…こんな翼を真は見た事がない。
まるで獲物を目の前にした猛獣のような翼。
『…もしかして…俺に興奮してる…?』
しかしなぜ翼がそうなったのか真には理由が全く分からない。
だがとりあえず今はこの状態から自分が自由になることが先だ。
「あ…ぁ…、はな…せ、苦しい」
動けば動くほど気持ちよくなりそうで身体に力を入れられないこの状態で翼から逃れようとしてはみるが、お尻に挿入されたモノが気になって思うように動けない。
そうこうしているうちに快楽が溜まった熱を暴走させようと酷く苦しいものに変わっていった。
「あン!…もう…ダメ…翼ぁ…!」
堪らず涙声をだすと翼はハッとした顔をしてようやく布団ごと抱きしめていた真を離し、もといた場所…ベッド脇に体を戻した。
「マコちゃんゴメン…つい…」
翼がシュンとした顔で改めてベッドの側で正座し直すと真はゆっくりとした動作でベッドの上で緩く正座をした。
直に座りたかったのだが…今お尻をベッドに直に置く勇気は無い。
「…それで今日はどうしたの?」
「マコちゃんに会いたくて…」
項垂れた姿はくぅ〜ん…という声が聞こえそうな叱られた大型犬のよう。
「…それだけ?」
「それだけって…あれ?ミチコさんから聞いてない?」
母は何か言ってただろうか?
腕を組み目を閉じてしばらく考えてみるが…今週は特に忙しくて…そう言えば月曜日、慌ただしく昼飯を食べていた時に母からの電話を取った気がする…。
「…何か言われたな…何だっけ…思い出せない」
あの日は…朝からずっと忙しくて、昼が終わるギリギリの時間にコンビニで買ったおにぎりを齧っていたら母からの電話が鳴ったのだ。
そこまでは覚えてる…。
「え〜っと… …」
はぁ、と翼が一つため息を落としてから言った。
「春から俺がここに住むって話じゃなかった?」
「…そうだっけ… … …あ!」
思い出して真は叫んだ。
「そうなのか!」
ミチコ(母)の言葉を思い出した。
『あなたのお家、静の部屋が空いてるわよね?』
その時は『あぁ』だか『うん』だか確か肯定する言葉を言った…ような…。
うん、多分間違いない。
だけど部屋が空いてるからといって誰かが同居するとは聞いてない。
部屋が空いている、という事実確認だけだ。
今真が住んでいるこのマンションは元々はやり手の姉が株で儲けた資金で購入し、ちょうど同じタイミングで真が就職したのをきっかけに姉弟で暮らし始めたのだ。
しかし今年の正月に姉は恋人と同棲するからとこのマンションを出ていき…真は相場より格安で姉に家賃を払い一人暮らしをすることになった。
つまり、姉のいた部屋は今使われていない。
『姉ちゃんの部屋が空いてるのかって…そういう意味で聞いてきたのか…』
真は母が言いたかった事を今頃理解した。
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