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第3話 【R18】淫鬼邑
引っ張り込まれた勢いが強くて、直桜はその場に転がった。
「いってぇ。もうちょっと丁寧に招待してくれたらいいのに」
起き上がりながら、当たりを見回す。
木々が茂る森には違いないが、先ほどまでの場所とは明らかに雰囲気が違っていた。
「邪魅が濃いな。住んでるのは妖怪で間違いなさそうだけど」
思わず口元を手で覆った。
通常より何倍も濃い邪魅の気配に吐き気がする。
(護は鬼だから、邪魅には耐性があるし、多分大丈夫だ。俺の方が倒れないようにしないと)
鬼の末裔である護は自分の霊気に邪魅を取り込んで使いこなせる。直桜と離れても問題はないだろう。
直桜の体の周りで、黒い空気の塊が弾けた。
(俺に触れた邪魅が勝手に浄化されてる。目視できるくらい、多いってことか。もしこの中に人間がいたとしたら、生きてないかもな)
霊《すだま》の感度が高い、つまりは霊感がある人間ならまだしも、普通の人間は邪魅に耐性がない。長時間、この場所に滞在すれば中てられて死にかねない。
直桜は歩き出した。より邪魅の気配が多い方へと向かう。
「さっきの森より、全然広い。本当はもっと大きな森だったのかな」
木々が茂る森の奥へと進む。少し開けた場所に、大岩があった。
「ふふ、ぁあ、可愛い……」
大岩の向こうから聞こえてくるのは、護の声だ。
声音が既に正気ではない。嫌な予感しかしない。
直桜は走って岩の向こう側に回った。
「護! え? 何して……」
岩に背を預けて座る護の股間に顔を突っ込んでいる者がいる。その姿は、どう見ても直桜だ。しかも、護の陰茎を咥えている。
「直桜、可愛い……。俺の精子、いっぱい飲んで喜んでる直桜、可愛いよ」
虚ろな目に快楽を溢れさせて、護が幸せそうに自分の陰茎を咥える直桜の頭を撫でている。
「護、それ、俺じゃない。正気に戻って……ぅわっ!」
護の周りから、突然甘い匂いが吹き出した。
(この匂い、護からじゃない。咥えてる奴からだ。この匂い、どこかで嗅いだ気が)
気が付いたら目の前に、自分が立っていた。護にフェラをする直桜の姿も消えてはいない。
混乱して一瞬、反応が遅れた。
目の前に立った自分に、両腕を掴まれた。振り払おうにも力が強い。よく見れば、その手は手ではなく、触手のように巻き付いている。
「なん、だ、これ。神力が、吸われて……」
突然の虚脱感で、力が抜ける。
(違う、吸われてるんじゃない。抑えられてる。楓の封じの鎖みたいな)
神力が萎えるのに比例して、頭がぼんやりとしてきた。
(気が付かなかったけど、あの甘い香り、森中に充満してるんだ)
邪魅に紛れて気が付かなかった。恐らく、邪魅と一緒に無意識に浄化していたんだろう。
「ぁ、なんか、きもちぃ……」
立っていられなくて、膝を付く。何故か体中が気持ち良くて、男根が勝手に勃起した。
(思い出した。蜜のフェロモンに似てるんだ。武流に口からフェロモンを流し込まれた時も、こんな感じで、体だけ、反応して)
しかし今は、頭もおかしくなりかけている。
何も考えずに、ただ快楽に溺れたい衝動が溢れてくる。
「もっと、気持ちよく、して」
目の前の自分に縋り付いて、気が付いたら懇願していた。
「いいよ」
目の前の、自分ではない自分がそういった。
腕に絡みついた触手が足にも胴にも絡みつく。目の前にいた自分は、人の形をやめて、直桜に絡みつくだけの触手になった。
触手が直桜の腕と足を拘束し、体が宙に浮いた。器用に服を剥いで、既に尖った胸の突起を刺激する。
「ぁ、ぁあ……、きもちぃ、もっと、もっと、してぇ」
弱い刺激では満足できずに、腰が勝手に前後に動く。
服も下着もずらされて、触手が、勃起した男根に絡まり付いた。ぐちゅぐちゅと扱かれて、今までにない気持ちの悦さが腹の奥に溜まっていく。
「ぅぁっ……ぃぃっ、もっと強く、してっ」
触手が強く絡まって、さっきよりも早く直桜の陰茎を扱く。
同時に、尻の穴を刺激していた触手が中に侵入し、手前の悦い所を擦り始めた。
「ぅぁあっ! らめ、良すぎて、イっちゃぅ、でちゃぅぅ!」
ビクビクと体を震わせる直桜の口に、太い触手が突っ込んで来た。
先から何かが分泌され、口の中に流れ込んでくる。
(なに、これ、甘い。あの匂いを凝集した液体みたいな)
口内を犯す触手が舌を吸って、液体を飲み込めと促す。
顔を上向かされたせいで、喉が勝手にその液体を飲み込んだ。
「あは、おいひぃ……、もっと、くらはい。もっと、のみたぃ」
触手の先端から出る液体が口の中いっぱいに流れこんでくる。飲み下せずに、零れても、どんどん溢れてくる。
直桜は必死になって液体を飲み込んだ。
「ぁー、飲むと、いっぱい、きもちぃ……、もっと、のみたい、きもちくなりたぃ」
飲めば飲むほど快楽が増す。何回でも絶頂出来る。
気が付いたら腰を振って、何度も射精していた。
出した精液は男根を包むようにして扱く触手が全部、飲み込んでいる。
(俺の精子、飲んでる。そうか、食事、してんのか。精を喰う妖怪か)
体は気持ちが良くて、零れる言葉は快楽を求めるのに、頭の一部が冷静だ。
(きもちぃ……、このまま、喰われてたい。どうせなら意識が飛ぶくらい、全部喰ってくれたら、良かったのに)
ちらりと後ろを窺う。
護の口にも太い触手が突っ込まれて、甘い液体を飲まされていた。
「あぁ、きもちぃ、もっともっと、俺の精子を飲んで、直桜、もっと」
直桜に突っ込んで、護が腰を振っている。恐らく触手が形を変えているのだろう。
たとえ自分の姿をしていても、護が自分以外のモノを抱いている姿を見るのは、気分が良くない。
突然、細い触手が護の耳の中に侵入した。
護の顔が狂気じみた悦楽に溢れた。
「あ! あはっ! 俺は、淫鬼様の餌、です! 死ぬまで精子を搾り取って! 気持よくしてぇ! あは、あはは!」
激しく腰を振って、何度も射精を繰り返す。
尋常でない様子に、直桜は自分の腕に絡まる触手を千切り落とした。足に絡まる触手を握り潰す勢いで掴む。
「俺たちを餌にしたいなら、先に俺を洗脳すべきだったね。これ以上、護に手を出すなら穏やかには済まさない」
直桜が掴んだ手の先から触手が枯れ落ちる。
ぷっくりと張りがあった触手は干からびて干物のようになると、塵になって消えた。
護に抱き付いていた直桜も同じように干からびて塵になった。
「ぅ、ん……」
ぼんやりと虚ろに半目を開けて、護が岩に凭れた。
意識はまだ混濁しているようだ。
「わかった、わかった。悪戯はやめるから、気枯れはそれくらいにしてくれないか。本当に死んでしまう。まぁ、話した後なら殺してくれて構わんのだがね」
ぼろぼろと塵になって崩れ消える触手の向こうから、人間の男の姿をした妖怪が現れた。
「俺は淫鬼。人間の精を餌に生きる古い妖怪だ。淫鬼邑にようこそ、直日神の惟神」
直桜の前に立った男は、ただ淡々と話し、淡々とした目で直桜を見下ろしていた。
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