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第20話 【R18】好きな振り

 甘い匂いが充満している。  息をしたら噎せ返りそうなのに、その香りを体が勝手に求める。  円はゆっくり目を開いた。  目の前に保輔の顔があって、キスしているのだとようやく気が付いた。 「あぁ、起きた? おはようさん。ほんじゃ、さっそく」  ベッドに横たわる円に跨って、保輔が自分の男根を突き出した。  逃げようにも体に力が入らない。拘束されている訳でもないのに、動けない。手足にあまり感覚がない。 「なに、して……、やめ、ろってば」  顔を背けてなけなしの抵抗を試みるが、無理やり口の中に陰茎を突っ込まれた。 「んぐっ……ぁん、んんっ」  意識は嫌がっているのに、体は勝手に保輔を求める。舌が喜んで陰茎を這い、吸い付く。 「言ったやろぉ、俺の精子飲んでって。俺のフェロモンたっぷり吸わしたさけ、気持ちええやろ」  喉の奥を陰茎の先が何度も突いて、嗚咽で唾液が零れる。それでも何度も執拗に突っ込まれて、円の口と舌は次第に従順に保輔のモノを受け入れた。 「あぁ、ええな。気持ちええよ、円。上手やね。ゆっくり扱いてや」  保輔の手が頬を伝う。それすらも快感で、舌の動きが速くなる。  溢れた唾液が男根に絡まって、次第にぐちゃぐちゃと卑猥な音を立て始めた。 「ん、今度は早ぅ動かして。出すから、全部飲むのやで」  保輔が腰を振る。それに合わせて舌を這わせて口で扱く。  口内に生温かいどろりとした液体が流れ込んだ。  保輔の手がやんわりと円の口を塞ぎ、顎を上向かせた。その勢いで、流れ込んで来た精子を飲み下した。 「ぁ、はぁ……美味し……、幸せ……」  胸の中に何とも言えない幸福感と保輔への気持ちが溢れてくる。  何時の間にか伸ばした腕を保輔が掴みあげて、円を抱き締めた。 「好き……、次は、うしろ、して……」  口が言葉を勝手に発する。 「|後ろ《腸》は効果切れんのに時間かかるから、あかん。円やったら俺の精子も、口なら精々一時間てとこや。切れても、俺を好きな振りしとけよ」  円の体を強く抱き締めて、耳に口付けるふりをして、囁かれた。 「ヤス~、花笑くん、陥落できた~? ありゃ、チョロかったね」  抱き合う二人の姿を見付けて、美鈴が可笑しそうに笑った。 「俺のこと、好きすぎて離れへん。もっと抱けって、しつこいねん。俺、本当は女専門やのになぁ」  背中をぐっと押される。   円は保輔の体を強く抱き締めた。 「もっと、して、保輔、好き、大好きぃ」  甘い声で啼いて、体を摺り寄せる。 「ぅわぁ、洗脳並みだね、イイ感じ~。切れたら次、私が遊びたいなぁ。花笑くん、好みなんだよねぇ。種くれないかなぁ」  ドキリとして指が震えた。 「美鈴は|masterpiece《最高傑作》やろが。|blunder《失敗作》の俺と違ぅて変な種拾ぅたら、槐様に叱られんのと違うの?」  槐、という名に気が尖る。 「槐様は怒らないよぉ。千晴所長は怒るだろうけど。だからさ、本番以外で遊んでくれないかなぁ。射精されなければ良くない?」 「結局、怒られるんやろが。責任取られへんから、突っ込むんも……っ」  円は保輔に口付けた。舌を絡めて、わざと深いキスをして見せる。  唇を離すと、うっとりした目で保輔を見詰めた。 「俺、保輔以外とセックスしたくない。もっと犯して、もっと俺と気持ちいいことして。いっぱい抱いて」  保輔の首筋に口付けて顔を寄せる。  その様を眺めていた美鈴が、呆気に取られていた。 「ヤスぅ、花笑くんの中に、どんだけ出したの? 当分、精子の恋愛効果、切れそうになくない? それじゃ、私が遊べないんだけど」  大変に不満そうな美鈴に、保輔が苦笑する。 「いやぁ、円が可愛くて、やり過ぎたわ。三回くらい中出ししたから、今日は切れへんかもなぁ。やっぱこの、女の子みたいな可愛い顔がチンコにクるわなぁ」  美鈴が呆れた顔をした。 「ヤスが三回も出すとか、ヤバくない? そんなに善かったんだ。花笑くん、初心そうに見えて実はエロいんだねぇ。益々遊びたいなぁ。明日は回してよね」 「ハイハイ」  保輔が適当に返事している。  美鈴が、首輪を投げて寄越した。 「ソレ、封じの鎖の改良品。他にも手枷とか足枷もあるけど、とりあえず試して」 「ああ、そろそろか?」 「もう来るよ。気配が近くなってきたって、六黒が話してた。よろしくね」 「はいよ」  保輔の返事を聞き終える前に、美鈴が部屋を出て行った。  抱き合っていた腕をお互いに解いた。 「合わせてくれて、おおきに。もしかしてもう、切れてる?」  円は首を振った。 「保輔好きだし、エッチもしたいって思うけど、理性や意識が飛ぶほどじゃないだけ」  口内に射精された直後の高揚感はないものの、欲情はしている。何とか抑えている感じだ。少し気を抜けばすぐに仮初の感情に呑まれる。 「そか。なるべく俺を好きな振りしといて。その間は美鈴は手ぇ出してこんから。六黒は喰いにくる思うけど、死んだりはせぇへんから、ちょっと喰われんのは堪忍な」  円は頷いた。  意識はあるものの、保輔の言葉に逆らう気になれない。何を言われても嬉しいと思ってしまう。 (口から射精一回分の精子を飲んだだけで、こんなに好きになるんだ。まるで呪詛や言霊術みたいだ)  ぼんやりと保輔を眺めながら、今の自分の感情と状況をゆっくり整理する。   「もうすぐここに、智颯君がくる。この封じの鎖、円が智颯君に付けるんや。ええな」  手渡されて、封じの鎖を受け取る。 「智颯君、なんで、来るの?」 「円を助けるために決まっとろうが。他に何があんねん」 「そっか、そうだね」  普段ならきっと嬉しいし申し訳なくて堪らないはずなのに、そういう気持ちも少しは湧き上がるのに、今は保輔の声を聞けることの方が嬉しく思ってしまう。 「俺らの目的は惟神の精子の採取や。それさえ済めば解放したるさけ。そこだけ、協力してや」 「全部、言われた通りにする。だからキスしていい?」  封じの鎖を放り投げて、保輔に絡みついた。  疼く体が勝手に保輔を求めてしまう。  保輔が円の体を引き寄せた。 「今は直後やし、好きにしぃや。ちゃっちゃと耐性術、使うのやで」 「ん、わかった」  ぼんやりと保輔の唇を舐めながら、円は真っ白な頭の中を少しずつ起こし始めていた。

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