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 堂々たる立派な体格を担ぎ上げるのに多少苦労はしたものの、これからすることを考えると苦でもなんでもなかった。  ベッドに横たわらせてシャツのボタンを外し、ゴクリと喉を鳴らす。  震える指で前をはだけば、逞しい肩先から胸板にかけて見事な紅椿の刺青が現れた。 「刺青(いれずみ)……!? なんて見事な……! あなたにこそお似合いですね」  その紋様を眺めているだけで、脳裏には淫らな妄想が次々と湧き上がった。  この腕で抱き締められたらどんな気持ちになるだろう。  彼が誰かを抱く時、どういうふうに欲情をさらけ出すだろう。  そんなことを想像すれば、自身の雄はみるみると天を仰いで張り詰めた。 「……クッ! ああ、堪らない……! 鐘崎、いや……遼二さん! やっと夢が叶った。どんなにこの時を夢見てきたか――あなたに分かるでしょうか。これであなたは僕のものです!」  戸江田はもう見ているだけでは耐え切れなくなり、天を仰いだ自身の雄を扱き始めた。 「……ッ、ああ……堪んない……! 遼二さん、あなたにはまだ触れてもいない。ただこうして眺めているだけだというのに、僕はもうこんなになっていますよ。できることならあなたの興奮した姿も見たかったけれど……今はこれで満足してあげます」  はぁはぁと荒い吐息を惜しげなく吐き出しては自慰に没頭する。絶頂を迎え、また興奮しては昂らせ、戸江田は愛しい男の傍らで狂気のように自慰行為を繰り返した。  そうしてひと通り満足に至った後は、熟睡している逞しい身体に抱きついて添い寝する。 「なんていい香りなんだ……鐘崎さん、あなたの匂いがする……。この香水、いつもあなたがつけているものですね。僕も同じのを買って持っているんですよ」  この数年の間、彼と同じ香水をつけ、幾度こんな行為に溺れただろう。来る日も来る日も一人ベッドの中でこの男の姿を想像しては虚しい自慰に明け暮れた。  だが、今はその彼がすぐ側にいるのだ。例え深い眠りについていようと意識が無かろうと構わない。重なった肌の温かさは紛れもない、愛しい男のものに違いないのだ。 「ねえ、遼二さん……あなたはどんなふうに誰かを抱くんでしょう。あの紫月とかいう男に欲を剥き出しているところなんか……想像したくもないですけれどね。でもちょっと見てみたい気もする――なんていう僕は変態でしょうか」  この数年、虚しい自慰を繰り返しながら想像したことは、あなたにめちゃくちゃにされることでした。  僕は最初の内は……嫌がるんだけれど。あなたは僕を愛していると言い、誰にも渡したくないと僕を貪り続けるんです。  キミは俺のものだと、絶対に離さないと、硬くしたあなたのここで激しく僕を犯すんです。  何度そんな想像をしたことでしょうね。  あなたに――こんな僕の気持ちが分かりますか?  戸江田は陶酔に浸り、起きる気配のない男の肌の温もりを堪能し続けた。

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