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「バッカなぁ、遼。おめえが俺を好きで好きで堪んねえってことはちゃんと分かってるって。おめえが人一倍俺を独占したいことも、人一倍ヤキモチ焼きなことも分かってる。がんじがらめにするくれえ愛してくれてるんだってこともさ。けど、俺ァそういうおめえが好きなんだ」 「紫……月」  それは本当か? こんな俺でもいいのか? と言ったように気弱な視線を揺らして見上げてくる。 「なあ、遼。おめえの愛する相手なら俺も一緒に好きでいられればいいなんてカッコいい台詞をさ、俺が言えるのは――」  どんなことがあっても、例え形の上ではお前が他の誰かと一緒になったとしても――。 「おめえの気持ちは、心の奥の奥のいっちゃん深いところにあるおめえの気持ちは――俺だけに向いてる、そう思えるからなんだ。おめえが本気で愛するのはこの世で俺っきゃいねえって、信じてるからだ。そんな根拠のねえ自信満々なこと思ってんだぜ、俺」  お互い様だと思わねえか?  お前は強欲だの我が侭だのと言うが、俺だって身勝手な自尊心でお前には俺以上に愛せる人間なんてこの世に存在しないとタカを括っている。 「俺なんてさ、人間できてるどころか実はとんでもねえ高慢チキ野郎だよ。戸江田さんや皆んなに『心が広い』なんて言ってもらえるようなデキた人間じゃねえ。そんな俺でも――おめえならいいトコも悪いトコもひっくるめて見捨てねえでいてくれるべ? だから俺も同じ。おめえが強欲だろうがヤキモチ焼きだろうが、そういうトコ全部ひっくるめて好きなんだ。そんなふうに独占してもらえることが堪んなく幸せなんだ。だからさ――」  その先は言わせてもらえなかった。鐘崎の熱い激しい口づけで塞がれてしまったからだ。  しばし、息もできないほどの濃く深いキスに掻き回されて――二人同時に我に返れば、どちらからともなく照れ臭い笑みが漏れ出してはとまらなくなる。共にポリポリと頭を掻きながら、額と額を合わせては微笑み合うのだった。 「――にしても、遼。おめえ、昔っからやたらとモテるんだからさ。ちっとは気をつけねえとな」 「すまん……。だがまさかあの戸江田にそんな目で見られてたとはな」 「打ち合わせで何度も会ってんだべ? おめえ、鈍感だからなぁ」  気がつかなかったのかよと訊かれても、本当に気付かなかったのだからどうにもしようがない。

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