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要は逆恨みである。だが、それにしてもなぜ十六年も経った今頃になって――しかも香港の父や兄ではなく遠い異国の自分にその怒りをぶつけてきたのかというのは理解し難い。まあこの息子の見た目から察するに、当時はまだ中学生かそこらだったのではないかと思われるから、報復を実行するまでに年月を要したということなのかも知れない。十六年前といえば周自身もまだ学生の身分である。父や兄から当時の話を聞いた覚えはあったが、詳しい内情までは知らなかったという方が正しいのだ。
「当時のことは親父と兄貴から大まかなことを聞いたのみで俺も詳しくはないが――そもそも利権争いそのものはお前の親父さんが束ねていた組織が手掛けていた表の仕事の案件だったと認識している。裏の世界のいざこざならファミリーが関与する必要もあろうが、表の商売にまで口出しをする義理もなかろう。それに、お前の親父さんが利権を争っていた相手も我々ファミリーとは関係のない堅気だったと聞いているぞ。例えが悪いやも知れんが、いわば堅気相手の揉め事をファミリーが仲裁するとなれば、ガキ同士の喧嘩に親が出ていくようなものだ。放置したという言い分にはいささか首を傾げさせられるところだ」
周は自らの椅子の下に爆弾が仕掛けられている上、真正面から銃口を向けられているにもかかわらず、それにそぐわない冷静沈着さを崩さない。しかも人質に取られているのはこの世で最も愛する伴侶たる冰というのに――だ。
男はそんな周の態度にも苛立ったようにして、銃を持つ手を震わせた。
「つまり……なんだ。あんたも俺の親父がバカだったと言いたいのか……」
「勝手な憶測で軽々しくものを言うな。そんなことはひと言も言ってねえだろうが」
「……言ったも同然じゃないか」
「第一にだ。目的が俺たちファミリーに対する苦情なら、なぜ先程俺の社を訪れた時にそう言わなかったのだ。ここは我々ファミリーとは何の関係もない異国の堅気が経営するホテルだぞ? 無関係な場所に爆弾なんぞを仕掛けて、仮にここを吹っ飛ばせば迷惑がかかるとは思わなかったか?」
「う……うるせえッ! 黙りやがれ!」
「いいや、黙らん。お前さんの言い分は当時なぜファミリーが仲裁に立って話を聞いてくれなかったのかってことだろう? つまりガキが喧嘩で負けたから、親が出ていってその相手をこらしめて欲しいと言っているようなものだ。だから親として意見したまでだ。何の関係もねえ堅気を巻き込んで爆破しようなんざクズのやることだ――とな」
「……クッ、まだ言うか……。ほ、本当に吹っ飛ばしてやるぞ……!」
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