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一方、冰 の方である。彼を捕らえている敵が今の返答の仕方に目を吊り上げていたのだ。
「馬鹿やろう! 誰があんな返事を返せと言った! ヤツらをこっちに誘き寄せなきゃ意味がねえと言ったろうが!」
銃口を突き付けながら小声で冰 を脅す。だが、冰 は開き直ったような態度でこう言ってのけた。
「ふん! 僕だってあの周焔 にはいい加減腹が立っているんですよ。あいつの側にいると毎度毎度こんな目に遭わされるんだ! あなたたちもホントは知ってるんでしょ? 僕が今までにも拉致られたり危険な目に遭ってきたってこと!」
意外な言葉に男たちは怪訝そうに顔を見合わせている。構わずに冰 は続けた。
「それにさ、迎えに来た二人だって極道者だ。どうせ僕の言い方に腹を立てて、こっちに捜しに寄って来るに決まってらぁな! そうすりゃあんたたちにとっても都合がいいわけでしょ?」
プイと、ふてくされたようにそっぽを向いて小さく舌打ちする。
「いいのか? あいつらは一応周焔 のお仲間なんだろうが。こっちに来りゃ、俺たちに殺 られちまうんだぜ?」
男が脅せども冰 はまるで態度を変えなかった。
「知るもんか。どうせあいつらだって僕よりは周焔 の肩を持つに決まってる。あんたらにどうされようが僕には関係ないね!」
好きにしてよと再びふてくされる。思っていたのとまるで違う展開に、男たちはすっかり警戒心を解かれたようだった。半ば呆れ顔で肩をすくめている。
こうなればシメたものだ。冰 お得意の話術で敵を引っ張り込むタイミングは今と踏んだ。
「そんなことより――ねえ、お兄さんたち! ひとつ相談なんだけど」
「――なんだ」
「正直なところ面倒事はご免だけどこの際仕方ねえや。上手くあいつらをこっちに呼んでやるから僕を助けてくんない?」
「助けるだ? ふざけてんのか、てめえ」
「ふざけてなんかないさ。言ったろ? 僕はもううんざりなんだよ! これ以上あの周焔 と一緒にいたら、いつまたこんな目に遭わされるか分かったもんじゃない! どうせあんたたちは周焔 のことも殺すつもりなんだろ? だったら僕に手を貸してよ」
「手を貸す? どういうことだ」
「いい? 僕はあの周焔 の伴侶だよ? あいつが死ねば遺産は全部僕に入ることになってんの! 僕を助けてくれたらそれをちょっと分けてやるよ。どう? 悪い話じゃねえだろ?」
ニヤっと人の悪い笑みを見せた冰 に、男たちには迷いが生じたようだ。
「その話、本当だろうな?」
「調子のいいこと言って俺らを騙すつもりじゃねえだろな?」
男たちが乗り掛かってきたところをダメ押しするように冰 は言った。
「騙すつもりならもっとマシな嘘を考えるさ! 僕だって自分の命がかかってなきゃ、見ず知らずのあんたたちに金を分けてやろうなんて思うわけないでしょ!」
そんなもったいないこと誰がするかよと苛立ちまでをも見せつける。
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