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「冰 君、よくやった! ダイジョブだったか?」
「紫月 さん! はい、なんとか……。それよりもすみませんでした! さっき思いっきり失礼なこと言っちゃって」
冰 は二人に対して暴言を吐いてしまったことを謝ってよこした。
「いいってことよ! 俺たちゃ冰 君の作戦だって分かってたしさぁ。上手くノッてくれて助かったぜ!」
「紫月 の言う通りだ。それにしても冰 、相変わらずに絶妙な掛け合いだったな! 咄嗟のことだってのに、良く調子を合わせてくれた」
何て言って相手を丸め込んだんだ? と、二人は興味津々だ。
「……ええ、まあ。ちょっとその……」
冰 はタジタジながらも手首にはめられていた爆弾というのを差し出してみせた。
「これがある内は動きが取れなかったものですから……。爆弾が仕込まれているそうで」
「爆弾!? ヤツら、こんな危ねえモンまで用意してたのか」
「――ってことは、案外氷川 の方にも同じような罠を仕掛けている可能性も考えられるな」
周の方も爆弾を盾にされて身動きが取れないでいるのかも知れない。
「よし、とにかく氷川 の元へ急ごう。既に源 さんたちが向かってくれてはいるが――」
鐘崎 はすぐに待機組の春日野 たちに通達を出して呼び寄せることにした。
「この人たちはどうしますか? ここに残していくわけにもいきませんよね?」
足元で転がっている二人を見下ろしながら冰 が言う。
「そうだな。とりあえず簀巻きにでもして連れて行くっきゃねえべ」
「あ、だったらいい物がありますよ! 資材庫から梱包用のロープを取ってきます!」
「そいつぁ助かるべ。悪いな冰 君!」
冰が取りに行っている間にノビている二人を倉庫入り口まで引きずっていく。とにかく広い倉庫内だ、意識のない大の男二人を運ぶだけで一苦労である。
「……ったく、手間掛けさせやがる」
「こいつらが目を覚ます前にふんじばらねえと」
外はますます嵐が酷くなっているようだ。雨はもちろんのこと横殴りだし、とにかく風が強くて気を許せば吹き飛ばされそうな勢いだ。
「嵐が強くなってきやがったな。とうとう直撃か――」
ちょうど春日野 らが到着し、駆け付けて来たが、そこでまたとんでもない事態を知らされる羽目となった。
「若! 大変です!」
「どうした、春日野 !?」
「外の壁ですが……人が吊るされているのを発見して」
「吊るされているだと!?」
「暗くてよく見えませんでしたが、おそらく冰 さんではないかと……」
まさか――!
「だって冰 君は今、資材庫にロープを取りに……」
皆はすぐさま表へ出ると倉庫壁面を確かめに向かった。――と、案の定そこには冰 らしきが屋上から長いロープで吊り下げられている様子に唖然とさせられてしまった。
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