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「冰 かッ!?」
「か、鐘崎 さん……すみません…… ドジ踏んでしまって」
資材庫に行く途中でまんまと敵に捕まってしまいました――雨風に掻き消されながらも弱々しい応えが返ってくる。冰 に間違いないようだ。
「なんで!? 敵はさっきの連中以外にも居たってことかよ」
紫月 が倉庫入り口を振り返る。
「だが冰 を拐って来たのはあの二人で間違いねえだろう。とすれば、連中の仲間が先回りしてここに隠れていたということか……」
あるいは冰 を拐った二人組が彼に倉庫の鍵を開けさせた時点で、後から忍び込んだのかも知れない。だとするならその気配に気付けなかったことを悔いたものの、この嵐の騒音の中では致し方なかったといえるか――。冰 もそのことは知らなかったのだろう。敵は彼をここへ拉致してきた二人だけだと思い込んで、安心していたに違いない。資材庫へ向かったところを別の誰かに捕らえられて、屋上へ連れ去られてしまったと思われる。
「春日野 ! お前らは倉庫内に敵が潜んでねえか当たってくれ! ヤツらは銃を所持している。くれぐれも気をつけてくれ!」
入り口でノビている二人を組員らに預けると、鐘崎 と紫月 は大急ぎで屋上へと向かった。
幸か不幸か、屋上へ行くまでの道筋で敵に遭遇することはなかった。ドアに鍵はかかっておらず、すぐに外へ出られたものの、壁面を覗き込んで見下ろせば衝撃の光景が飛び込んできて焦らされてしまった。
そこにはロープ一本で冰 が吊り下げられていて、突風に揺られながら何度も壁に叩きつけられている。
「冰 ! 今引き上げる! 辛抱しろ!」
ところが冰 からの答えは想像以上に厳しいものだった。
「ダメです! ロープを見てください! 所々ナイフで切り込みが入れられてて……引き上げれば俺の重さで切れてしまう!」
「何だとッ!?」
見れば確かに数カ所への切り込みが確認できる。
「クソッ、ヤツら先に屋上へ上がってこれを用意していやがったってわけか――」
問題はそれだけではなかった。冰 が再び叫んでよこす。
「鐘崎 さん! それから首にも爆弾が下げられてしまったんです! さっきの腕輪よりもずっと大きいやつです! タイマーが仕掛けられてて……あと十分で爆発するそうです!」
冰 は構わずにここから退避してくれと叫んでよこした。
「バカ言ってんじゃねえ……ッ、誰が退避なんぞ……」
目の前には埠頭特有の太い車道があるものの、その先は真っ暗な海だ。台風によって大荒れに荒れている。
と、その時だった。春日野 が無事に残りの敵を捕らえたと報告しに上がって来た。
「二人を捕らえました! ヤツらの言うには、ここへ回されたのは先程若 たちが捕らえた者を入れて四人、それで全てだそうです!」
ということは後方の憂いは無くなったというわけだ。
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