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第2話

 ――けだもの。  月丸(つきまる)は途切れそうになる意識をなんとかつなぎとめていた。  まだ、中に、あの男のものがはいっているような不快感があった。男は背後で何度も興に入ったようだが、月丸は満たされていない。彼が欲を発散させるために買われたからだが、そのもどかしさと、強引に捻じ込まれた痛みとで、腹の奥はひりひりと焼き付いていた。  知られたら、男はおぞましい笑みを、その気味の悪い口もとに浮かべるに違いなかった。  淫猥な豚だと、いうだろう。  山の上から霧がふりだし、身体はしっとりと濡れていく。身体を起こそうと身じろいだ途端、後ろから、男の潮が溢れでた。今夜の初入(はつしお)に染め出された肌着が、その潮のせいで色濃く滲んでいた。  汚いと、月丸は眉を寄せる。 「誰も、邪魔をしにこないというのは、いいな……」  倒れかかる男が、首筋に低い呻きを這わせる。  怖気を背筋にはしらせて、月丸は這い出そうと四つん這いになった。  引き掴まれるかと思ったが、男は疲れ切った身体を後ろにどっかりと下ろし、未だに身体の芯を捕らえて放さない恍惚感に白目を剥いて、浅黒い肉体をひくひくと痙攣させていた。  足の爪先まで堂々とした体躯を持つ男であった。  大きく開いた股ぐらからぶらさがる物は、吐き出したばかりの青臭い匂いをむんと放ち、月丸の後ろから放たれた淫な匂いとを絡ませている。それが妙に心を擽る香りを上らせていた。これを、小生意気な小さな口に扱わせてやりたいとの思いが、むくむくと、男の情欲を疼かせる。 「しかし、良い……」  戯言のように繰り返し、男は顔中に流れる汗を、早朝の冷たい靄に拭わせた。  月丸は素肌に霧をまつわらせて座っている。  濡れた黒い髪が白い項に色っぽく流れていた。  ――前がみたい。  無防備に晒された四肢に、喰らいつきたい。  白く、丸い腹の、柔らかな肉の下に、男らしい関節が伸びる。その結び目に、彼の象徴が、欲を秘めているのだ。その欲は、甘い蜜でたっぷりと濡れた、胸の赤い蕾みの快感を知っている。  小さくそそり立つ胸の蕾みに艶やかな黒髪が張り付いて、舐めてくれといわんばかりに強調しているに違いなかった。 「おい……、からだを、こっちに向けてみろ」  気が逸る。早く欲しくて、たまらないのだ。  ――うるせぇ親父だ。  月丸は口の中で吐き捨てた。

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