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第9話:俺と親父の事情(攻視点)
「俺、冬真のこと、好きになっちゃったみたいなんだ……」
朔太が俺のワイシャツをきゅっと握りしめ、頬を染めて上目遣いで見つめてくる。
朔太から好きと言ってもらえるなんて、こんな幸せなことはない。
唇を合わせると、かすかにふるえて応えてくれた。
かわいい。かわいすぎる。
幸せだ……。
家に帰った俺は、何度も何度も朔太との思い出を反芻した。
俺の思考はさらに飛び、その先の、まだ起きていない色々まで妄想してしまう。
「冬真……大好き……」
妄想の中の朔太が、ワイシャツのボタンを自ら一つ一つはずす。
なぜか肌着を着ておらず、ピンクの乳首が見え隠れする。
「俺も好きだ……愛してる」
「嬉しい」
「もっとこっちへおいで」
「うん」
俺は、はやる気持ちを抑えられず、ワイシャツの前を大きく開き、ピンク色の突起を口に含んで強く吸う。
「あん……ダメ……」
妄想の朔太は、恥じらいながらも甘い声を上げる。
「ダメじゃないだろ」
「だって……恥ずかしい……」
「ほら、ここももう硬くなってるじゃないか」
「やぁん……そこだめぇ……」
「ダメじゃない」
俺は朔太の下半身に手を伸ばす。妄想の中なので、朔太はもう下半身裸である。
「恥ずかしいよ……」
「俺にこうされるのが好きなんだろう?」
言いながら、朔太のかわいいペニスをしごく。
「あんっ……好き……だけど……ダメだよ……あんっ」
俺の手の中で、朔太のモノが徐々に大きくなっていく。
「口ではそんなことを言っていても体は正直だな」
「やぁっ……」
「どうしてほしいんだ?」
「冬真の……入れてほしいよぉ……早くぅ」
妄想の中なので、俺のイチモツは、朔太の後ろの穴に、スルリと入る。
「ひ……あっ……すごい……」
ズンッ、ズンッ、ズンッと妄想の俺は激しくピストン運動する。
後ろから突いているはずなのに、なぜか気持ちよくなってしまっている朔太の顔が見える。
「あんっ、あんっ、あんっ……気持ちいいよ……」
「冬真……大好き……ああんっ」
「俺もだ……愛してる」
「嬉しい……」
「一緒にイこう……」
俺は、妄想の中の自分の限界が近いのを感じ、さらにスピードを上げて腰を振る。
「冬真……イッちゃう……! ああんっ! 出して! いっぱい出してぇっ!」
どぴゅっ、びゅー!
* * *
「はぁ……、はぁ……」
俺はティッシュの中に放出された白い液体を眺めた。
最近、毎日こうだ。でないと学校で授業中に朔太の姿を見ただけで射精してしまうおそれがある。
デートの日は、前の晩に一回、当日の朝に一回抜いておかないと、ムラムラが抑えられない。
今日は、実際に朔太に告白されてキスをするという夢のような僥倖に恵まれたため、一回では足りず、もう二回目だ。
まだムラムラするので、後でまたやると思う。
今日も危なかった。
朔太が「そろそろ帰ろっか」と言ってくれたので、無事に唇だけのキスで済ませることができたが、そうでなければ、あの場で押し倒して、二回はセックスしていたと思う。
我ながら、どれだけ性欲が強いんだとあきれるばかりだが、遺伝なので仕方がないだろう。
しかし、俺は親父のようにはならない。ヤリチンの父子家庭で、俺がどれだけ苦労したと思っているんだ。
子供の頃は、入れ替わりで知らない女の人が常に家にいて、家事や俺の世話をしてくれた。
基本的に皆優しかった。
しかし、小学校に上がる前にはすでに、「この人たちは、俺のお母さんのようなふりをすることで、周りやお父さんに、『お父さんの奥さん』と思われたいんだな」ということがわかっていた。
俺におもねることで親父の好感を得たいという、じめっとした打算が不快だった。
俺は家事を覚え、「自分で留守番できるので、女の人に家に来ないでほしい」と親父に言った。
親父もそれでわかったのだろう。女の人は家に来なくなり、俺の目の前では色事は見せなくなった。しかし、いまだに、客やバイトに手を出しまくっている。そのくせ俺の母親にも未練タラタラで、部屋は母親のAVだらけだ。
俺は、親父のようにはならない。
愛した人を生涯大切にする。結婚するまでセックスはしない。男同士ならかわいそうな子供ができてしまう可能性はないが、ヤリ捨てなどは、絶対に絶対に許されない。
朔太とも、結婚(概念)するまで、セックスはしない。
しかしもうすでに、妄想の中では毎日最低二回くらいセックスしている。いったい俺の理性はどこまで持つんだろうか。
ボーっと賢者タイムをしていると、ガチャッと玄関のドアが開く音がした。親父が帰って来たらしい。
「お帰り」
俺は服を整え、台所でタッパーに入れたおかずをあたため直してやった。
「ありがとう。いつも助かるよ」
親父はハリウッド俳優のようなキラキラの笑顔で言う。こいつは、フランス人と日本人のハーフなのだ。
俺の母親と子作りをした後、フランスでの修行中に師匠の娘に手を出して破門されている。カフェにラインの出た妊娠検査薬を持った女性が押しかけたこともある。(結局メルカリで買った偽物だった。)
今日のラインナップは、鶏肉のトマト煮、オクラとわかめときゅうりのめんつゆあえ、キャベツスープだ。
糖質脂質を取りすぎないよう、献立には気を使っている。
「おいしいよ。洗濯もやっておいてくれたんだね。いつもごめんな」
こまめに、感謝とねぎらいの言葉をかける。これが親父の手口なんだよな。
見た目が豪華なら、安っぽい言葉でも女たちは満足してしまう。
俺は、カフェで働きながら、その安っぽい言葉すら一緒にいる女性にかけることができずに、二度と現れない男たちを何人も見てきた。
誰も質問していないのに始まる自慢話、俺の知ってるすごい人、無意味に乱暴な言葉遣い、相手の好きなものへの批判……。
女性同士で来ている客の愚痴から、これらはすべてアウトだということを、俺は学んだ。
親父は天然で、こういうことを一切やらなくて、かつ顔がいいからモテるんだろう。
俺へのねぎらいも、どうやら本気で天然で言っているようだ。だったらちゃんとした結婚生活を送ってほしい。
俺は、母親からの養育費を自分で管理し、資格を取得するのに使って、後はすべて貯金している。
俺は早く経済的に自立する。そして朔太と幸せになる。
──朔太と同棲してる妄想しながらもう一回抜いてから寝よう。
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