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第16話:(ほぼ)ハメ撮りに大切なこと

 新学期。  9月下旬に開催される、文化祭の準備が本格的になってきた。  うちのクラスは、カフェをやる予定だ。  特にコスプレとかをするわけでもない、普通のカフェ……ということに一学期はなっていたような気がするのだが、準備が進むうちに、皆だんだん「普通のカフェではつまらない」という気分になり、「衣装とか持っていて、やれる人は勝手にコスプレしちゃおう」という話になってきた。  女子なんかは、はしゃいで、メイドさんだの巫女さんだの言っている。  まあ、俺は関係ないよな……と思っていたのだが、俺がいつも一緒にいるグループのユウヤが、クラス打ち合わせの最中に、 「朔太君がコスプレ似合うと思う人~~!」  と言い出し、満場一致で俺がコスプレすることになってしまったのだ。こっそり横目で冬真の様子を伺うと、冬真もちゃっかり手を挙げていた。 「……はい、じゃあ朔太の衣装決めまーす」  放課後の教室で、ユウヤがその場に残っている奴に意見を募る。  冬真は窓際で、何か勉強しているようだ。 「やっぱメイドさんじゃねーの」  田中が言った。 「やめろよ! そもそも俺コスプレしてもいいとか言ってないし!」  俺は必死で突っ込んだ。 「そうだよな。やっぱコスプレと言えばメイドだよな。女子で服持ってる奴いるらしいし、メイドさんで声かけてみるか」 「そうだな」 「流れるようにスムーズに決めてるんじゃねーよ! やらないって言ってるだろ」  さっきから何度も言っているが、全然聞いてもらえない。  くっそー!  ──ダンッ!  その時、窓際の席にいた冬真が机を叩いて乱暴に立ち上がった。  つかつかと俺たちのいる教卓に向かって来る。  ──さすが冬真! 俺を守ってくれ! 「朔太がメイドさん、だと……?」  冬真は眼鏡を外して胸ポケットに入れると、ユウヤをにらみつけ、チョークを手に取って黒板に書かれた「メイド」の文字に乱暴にバツを付けた。 「な、なんだよ藤倉……」  突然、日頃あまり話したことのない冬真に凄まれて、ユウヤがビビる。 「朔太は……」  ──ドンッ!  冬真は黒板を拳で叩いて力強く言った。 「ミニスカウェイトレスさんだっ!」  ──!!! (俺を除く)男たちの心は一つとなり、ただちにミニスカウェイトレスさんの衣装が手配された。 * * * 「うう……冬真なんで止めてくれないんだよ……」  俺は、冬真の家の風呂場で、肌着姿で風呂椅子に座らされている。 「しかも、スネ毛の除毛くらい、自分でやるし……」  俺の両足には、除毛フォームの泡が、たっぷりと塗りたくられていて、冬真は、俺の足もとに跪いて塗り残しがないか丹念にチェックしている。  眼鏡を外した曇りなき瞳で俺を見つめ、冬真は微笑みながら言った。 「ごめんな。朔太は俺だけに独り占めされたいよな。でもせっかくのチャンスだったから……」  いやいやいや、間違っても「独り占めにされたいから」ではないぞ! 「朔太がめんどくさがって適当にスネ毛を剃って、俺の朔太の綺麗な脚が荒れたりしたら、俺が悲しいからさ」  ──俺の脚はおまえのものじゃない! 「さ、流すぞ」  冬真はシャワーで除毛フォームを洗い流していく。  毎日自分でシャワーを浴びていても何も思わないのに、温かいお湯で優しくしゃわしゃわと流されながら、冬真の手が俺の脛を撫でると、なんだかぞわぞわしてドキドキしてくる。 「冬真って、過保護だよな……」  俺は、ちょっとドキドキしてきたのを押し殺すように言った。  冬真の両手が俺の右足首をそっと持ちあげる。 「過保護じゃない。大切にしてるんだ」  そして俺の右足の甲に、唇をつける。 「……っ」  ちゅ……と、軽く吸われて、俺は思わず息を呑んだ。 「朔太は自分で思っているより、俺のものだよ」  冬真が、顔を上げて言う。 「な……」  そんなわけあるか! と言おうとしたのだが、胸がドキドキして何も言えなくなってしまった。 「あ、あとは自分で流すから! 出てけよっ」 「わかったよ。あ、ついでにシャワー浴びてもいいぞ」  冬真はクスッと笑って風呂場から出ていった。  いちいちエロいんだよ!  俺は自分で残りの除毛フォームを流した。  ……。  ……ついでにシャワー浴びるか。今日は暑かったし。  * * *  脚がスベスベになった俺は、風呂場から出て冬真の部屋に入った。  リビングに入るよりも、なんだかドキドキする。  冬真の部屋は、塁さんの部屋と違ってきちんと片付いていた。エッチな本やポスターも見当たらず、勉強机と本棚、ベッドがあるだけだ。 「出たぞ」  俺はもじもじしながら冬真に声をかけた。 「よしよし。……じゃあ、今日渡された衣装を着て?」 「うう……」  俺はしぶしぶ、今日女子から渡された、ミニスカウェイトレスさんの衣装を出した。 「今ここで着てみせて」 「え、冬真の目の前で着るのか?」  着替えだぞ。いったん席を外してくれるんじゃないのか。 「だって、もう肌着とパンツなんだから関係ないだろ」 「うう……」  俺は、ミニスカウェイトレスさんの衣装を冬真の目の前で頭からかぶり、エプロンの紐を結んだ。  ウェイトレスさんの衣装は、白地に細かい赤の水玉の、膨らんだ袖のミニスカートだ。  スカートの中には何重にもフリルが入っていて、スカートがふわふわにふくらんで見える。丈は俺の膝より十センチ以上短く、しゃがんだら丸見えになりそうだ。本番ではスパッツ履こう……。 「かわいい」  冬真が近づいてくるのでビクビクしてしまう。 「エプロンの結び方が斜めになってるぞ」  冬真は、後ろに回ってエプロンのリボンを結び直した。  それから俺の髪の毛を整えて、フリフリのついたカチューシャを頭に乗せる。 「……完璧だ!」  冬真はうっとりしている。 「や、やめろよぉ……」  恥ずかしすぎる。 「写真、撮ってもいいか?」 「だ、だめだだめだ! ばらまかれたりしたら、一生の恥だ!」  しかし冬真は引き下がらなかった。 「じゃあ、朔太のスマホで撮る。それなら拡散しないだろ?」 「う、うう……」  俺は冬真にスマホを渡した。 「ポーズ取ってみて」  ポーズも要るのか……?  俺はやむを得ず、「いらっしゃいませー」みたいな感じで、右手を挙げて席にご案内するポーズをとってみた。 「か、かわいい……」  冬真はスマホを構え、何枚も写真を撮った。 「ハッ! こうしちゃいられない!」  冬真は慌てて、キッチンから銀のお盆やらカップやらを持ってきた。さすがカフェ経営の家だけあって、こういうのがいくらでもあるんだな。 「はい、お盆を抱えて~」 「こ、こうか?」  言われるままに、お盆を持ってポーズを取ってみる。 「次はカップ乗せて~」  冬真は、何枚も写真を撮る。その度に、 「朔太かわいい……朔太かわいい……」  とハァハァ言っている。  ──うるさい! もう早く終わってくれ!! あああああああああ……っ!  ひとしきり撮影が終了したらしく、冬真は、これまでに撮った写真をチェックし始めた。 「お、ようやく終わりか?」  わーい。 「ダメだ……。全然ダメだっ!」  ──ハ?  冬真は、撮れた写真に満足していないようだ。まあ、男だからな、かわいくなくても仕方ないだろ。 「違う……。『俺のもの』感が足りない! ハメ撮りに大切なものは、『俺のもの』感なんだ!」  いや、これは文化祭の喫茶店のためのウェイトレスさんのコスプレであって、ハメ撮りではないんだが。  冬真は、スマホを持ったまま俺に近寄り、衣装が乱れるのも構わず、後ろからぐしゃっと抱きすくめ、俺の頭を後ろに向けさせて、キスをしてきた。  舌を入れて俺の唇を貪る。 「な、何する……」  カシャッ。  冬真は、左手を前に伸ばし、インカメでその様子を撮った。 「と、撮るなよ!」  冬真は俺の抗議の声を無視して、舌でちゅくちゅくと俺の口内を愛撫しながら、左手で器用にスマホを操り、また写真を撮った。 「ハアッ……朔太かわいい……俺のもの……」  ──こいつ! 絶対後で消す!  ……と思っているはずなのに、抵抗できない。冬真にキスされると、俺の口の中はトロトロに溶けてしまって、夢中で舌を絡めてしまう。 「あっ…んんっ……」  腰が砕けて立っていられなくなると、冬真は俺の腰を支えながらドサッとベッドの上に押し倒した。  ウェイトレスの衣装の胸元のボタンを一つ一つはずし、乳首をぺろぺろと舐める。 「あんっ……」  冬真のおかげで、すっかり乳首で感じる体になってしまった俺は、体をびくっとさせて恥ずかしい声を出してしまった。  ──カシャッ。  シャッター音が聞こえる。どうやらまた撮ったようだ。 「や……、と、撮るのやめろよぉ……」 「かわいいよ朔太……。エッチな目になってる……」  冬真は、撮れた写真をチェックし、耳元でささやいてきた。 「撮るのは……撮るのはやめろぉ……」  冬真は、スカートの下から手を突っ込み、ボクサーパンツをずり下げてきた。 「朔太の、もうこんなになってる……」  冬真は、俺のちんこをゆっくりしごき始める。  ──カシャッ。 「や、もう……撮るなってぇ……」 「上半身しか撮ってないから大丈夫だよ」  カシャッ。カシャッ。カシャッ。スマホが連続してシャッター音を立てる。  ああ……っ! もうやめてくれよぉ……!  俺は恥ずかしさと快感で涙目になった。 「と、とうまぁ……」  俺を撮っているのは冬真なのに、俺は助けを求めるかのように、冬真の背中に手をまわしてしがみついた。  体が求めるままに、冬真の唇を吸う。  ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……。 「朔太、気持ちよくなっちゃってるんだな。……いいよ、もっと気持ちよくしてあげる」  冬真はスマホをベッド脇に置き、俺の隣に寝転び、片手で俺の乳首を転がして、もう片方の手でちんこをしごいてきた。 「とうまも、冬真も気持ちよくなろ……?」  俺は冬真にちゅっ、ちゅっ、と口づけしながら、ズボンの中から冬真のちんこを出した。  冬真のちんこがもう硬くなっていることに興奮する。  冬真は、俺と「したい」んだ……。  冬真に求められていることが嬉しい。  俺は自分のちんこを冬真のちんこにこすりつけた。 「あっ、はぁっ、はぁっ……あんっ」  敏感な部分が触れ合うと、胸がキュンとして、喘ぎ声が出てしまう。  冬真の手が、俺の後ろの穴をさぐった。  つぷっ……。 「朔太、もしかして、さっきシャワー浴びた時、自分でほぐしてたの?」  俺は真っ赤になって、冬真に抱きついた。 「だって、この前指で練習したから……」 「朔太……」  二人でちんこをこすりつけ合いながら、冬真は俺の後ろの穴を指で責めたてる。 「あんんっ、あんっ、あんっ……」  すっかり冬真に開発されてしまっている俺は、すんなり二本、三本と指が入るようになってしまっている。 「はああんっ、ああんっ」  お尻の穴がおかしくなっている。指で気持ちいいところを押されて、十分気持ちよくなっちゃっているのに、前も後ろも、もっともっと気持ちいいところが膨らんできて、もっとしてほしくてたまらなくなってしまう。  お尻の穴が切なくて、涙が出そうだ。  我慢できなくなって、俺は冬真の首の後ろに手をかけ、夢中で言った。 「とうま……っ、俺……、冬真と……したい……」

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