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先輩×後輩
「いいよ」
「え、嘘。ごめんなさい」
「なんで謝るの。親いないし問題ない」
先輩はいつものように僕の制服を正すと、カバンをふたつ持って立ち上がり、おでこに唇を押し当てた。こんなキスは初めてで、どうしたらいいか分からない。
「なに、そのキス」
「もっと色っぽいのがいい?」
茶化すような言い方がまた不安を煽 る。僕がカバンを持とうとすると、先輩が右腕にふたつとも抱えてしまい、僕を左側に収めた。優しさで何かを予防している。いつからか、そんなふうに考える。荷物を持つのにも限界があるのに、僕のは次から次へと増えるのだ。それを全て肩代わりする理由が先輩にはない。夕焼けと夜が混じる奇妙な空の下、先輩の家は十五分程歩いたところで到着した。
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
ローファー以外の靴が先輩の日常と共に並ぶ玄関を抜け、密着した際に微かに制服から香るにおいが充満した部屋へ通される。しばらくひとりにされた後、飲み物を手に戻ってきた。
「遅くまで、誰も帰ってこないから安心しろ。帰りも送るし」
「優しいですね」
皮肉っぽく聞こえたかもしれない。でも今はそれが精一杯だった。飲み物を口にする隣りで、ブレザーを脱ぐ先輩にどきりとした。
「続きする?」
コップを置いて同じようにブレザーを脱いだ。先輩は肩を引き寄せて、そのまま胸の中に僕を入れた。いつもと違う始まりに心拍が速くなる。キスをした。服に手を入れ、上半身を優しく触る。胸までくるともっと優しくなって、それは段々と意地悪に変わっていく。そうすると僕は先輩にしか見せない恥ずかしい姿になる。自分じゃないみたいな声が出る。すると視界が奪われる。今日も。
「いやだ。優しくしないで」
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