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この先の季節も君と2

「なぁ、どう思う?」 「どうって、もう答えでてるじゃん」  1人で考えていたって思考は同じところをぐるぐると回るだけだ。だから高校からの腐れ縁である|倉知絢佑《くらちけんすけ》を居酒屋に呼び出して相談した。  そう、相談したのだ。なのに、もう答えは出ているという。 「答えなんて出てないから相談してるんだろ」 「でてるよ。だってお前自分でなんて言ったか覚えてる? 好きだと聞いて嫌悪感持つどころかずっと考えてるじゃん。それにその前からずっと考えてただろ。それって好きってことじゃないの?」  好き?  俺が薬井さんを好き?  緊張感を感じながらも会うことは嫌だと思わなかったこと。薬井さんが来るのを待っていたときの感情。薬井さんの表情。薬井さんの笑顔が好きでまた見たいと思っていたこと。それらが好きということなのか。 「あのさ。好きだと思うことに嫌悪感はある? ないだろ? だって嫌悪感があるなら考える必要もないだろ。でも考えた。だろ?」  言われてみればその通りだ。嫌ならその場で答えればいい。少なくともこんなふうに何日も考え続ける必要はない。でも、俺は何日も考え続けたのだ。それは、そういうことなのかもしれない。ただ、それが恋愛の好きなのかわからないのだ。  画家として……。画家としては好きだ。あの青が忘れられない。海の青と空の青。同じ青なのに全然違う顔を見せる。そして青い薔薇。それは画家として好きだということはわかる。わかるのだが……。 「でも、それが恋愛の好きかわからない」 「じゃあさ、キスすることを想像してみて。それで気持ち悪いと思うのなら画家として好きってこと。でも、もし嫌だと思わなかったらそれは一人の男として好きなんじゃないの?」  キス、できたら……。  薬井さんとキス……。  気持ち悪いと思わない。  もし、薬井さんがそうしてきたら驚きはする。でも、気持ち悪いとは思わないし、突き飛ばしたりもしない。多分……。  そうか。やっとわかった。 「でも、どうしたらいいのかわからない」 「それは自分で考えろ」  考えて下さい、とは言われた。でも、いつ会うとか決めてもいない。それは俺が決めて誘えばいいのだろうか?  そんなの無理だ。  考えてみたら、いつも誘ってくるのは薬井さんからで、俺からはない。薔薇園のときもステーキハウスも紫陽花も。そんなことに今さら気づいた。  でも、俺から誘うなんて無理だ。まして自分の気持ちに気づいてしまったらよけいに。それでも、このままでは一歩も前に進めないのだ。  それでも、きっと俺から連絡するべきなんだろうな。でも、なんて言って連絡すればいい? 考えました、とか言って連絡するのもどうかと思うし。でも、だからと言ってどこに誘っていいのかもわからない。  考えてみたら薬井さんとはよく花を一緒に見ている。今の時期に何が咲いているか。どこか綺麗に見えるところはどこにあるのか。俺はそんなことはわからない。だとしたら食事にでも誘えばいいんだろうけど、日頃1人で引き籠もっている俺は小洒落た店とか美味しい店とか知らない。だから、どう誘ったらいいのかがわからない。

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