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第21話 女アレルギー発動。灯織のターン
「灯織ー。今夜って空いてる?」
寝室で足の爪切りしてたら、リビングから綾人の声。灯織は、大きな声で
「暇ー! 今日仕事休みだから」
と返答する。
「ちょっと連れてきたいとこあるんだけど」
ぬっと寝室に現れた綾人を横目に、ぱちぱちと爪を切っていく。
「ん〜? まあいいけど」
「よし。じゃあ俺、仕事終わるの20:30くらいだから、ハチ公前の看板の前で待ち合わせな」
「あーおけまる水産」
夜まで暇なので、綾人が出社したあとはリビングにいるおもちと一緒に過ごすのが常になっていた。灯織の生活リズムと綾人の生活リズムはズレている。
綾人は週5日で小動物カフェで働いてるらしい。「まじ? すごいじゃん。行ってみたい」とリクエストしたら、「知り合いには見られたくない」などと断固として許可してくれなかった。小動物カフェは土日祝が1番売上が伸びるらしく、綾人は基本平日休みで、シフトによって休みが変わる不定期労働らしい。その辺は灯織と似ているかもしれない。
灯織は週6でホストクラブで働いている。19:00~1:00まで。綾人の家に帰宅するのは2:00~3:00頃。同じ家に住んでいても、生活リズムが違うから顔を合わせて話すことはそんなに多くない。
「おもち〜えらいね〜もう、ちっちも上手にできるんだね〜」
ペットシーツの敷いてある猫砂トイレの上でふんばっているおもちを応援しつつ、TVに流れるニュースを流し見する。ちっちを終えたおもちが、「なー」と鳴いて灯織の膝の上に飛び乗ってきた。これがおもちの定位置だ。子猫の成長は早くて、おもちと灯織が綾人に保護されてから1ヶ月が経過したが、もうおもちは大人の体つきに向けて筋肉が付きはじめている。
先週、「そろそろキャットタワーも買ってやるか」と綾人が洩らしてたような気もする。
おもちは白いわたあめみたいな見た目をしている。ふわふわの毛並みと、まん丸なおめめがきゅーと。成長してから判明したのだが、おもちの手足は短めだ。マンチカンという猫種なのだと綾人から聞いた。その、てくてくと歩く様子がかわいくてかわいくて。今日も灯織はおもちの喉を撫でつつ、お姫へのLINEを送りまくる。
おもちが手足をバタバタさせ始めたので、スマホから手を離す。
「おもち~どちたの?」
「なー」
おもちを覗き込むと、灯織の指を掴みはむはむと吸い付き始めた。まだ心は赤ちゃんのままらしい。甘噛みというやつで、本気ではないため灯織もされるがままでいた。
夕方の15:00になり、灯織はニャクテンで買い集めた猫のおやつを用意する。実は綾人から常々、おやつを与えすぎるなと言われているのだが、厳しく育てるのも自分の意思にそぐわないので、健康に害を及ぼさない範囲で綾人に内緒でおもちにちゅーるをあげている。
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