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異変に気づいたのは夕食から四時間ほど経った頃、風呂場にてアイルの体を洗ってやっているときだった。
――熱い……。
どういうわけかじんわりと体が火照る感覚に、フィルは困惑する。泡の立つタオルを持ったまましばし硬直するフィルを見て、アイルがことりと首を傾げた。
「フィル、どうしたの? もしかして逆上せちゃった?」
「あ、いえ……そういうわけでは……」
ぎこちなく頭を横に振り、フィルは否定した。ボディタオルを持つ手に力を込め、再度アイルの体を洗い始める。
「フィルにコシコシされるの、気持ちいな〜! ねえねえ、そこもっと強く擦って!」
「っ――」
途端に、下半身がズクンと脈打った。連動してビクリと震えた体に、フィルは目を見開いて動揺する。
――こ、これは……っ。
「フィル? どうかしたの?」
振り返って尋ねてくるアイルの胸元を見て、思わずごくりと息を呑む。慌てて視線を逸らし、フィルは立ち上がった。
「申し訳ございません、アイル様。どうやらアイル様の仰る通り、少し逆上せてしまったようです。大変申し訳ないのですが、続きはご自身で洗っていただいてもよろしいでしょうか」
「えー! フィル、大丈夫っ? 僕、一人でもちゃんと体洗えるよ!」
言って、アイルは勢いよくバスチェアから腰を上げた。その動作で、下半身にぶら下がったイチモツがぷらんと左右に揺れる。
「っ――」
目が眩むような感覚を、フィルは息を押し殺して堪えた。
「……ご心配いただきありがとうございます。少し涼めば治まると思いますので、恐縮ながらお先に失礼いたします」
そそくさと告げて、風呂場を後にする。ひとまず自室に退散しようと足早に廊下を歩いていると、折悪くウォーレンと出会した。
「急いでどうしたんだ、フィル。アイル様の入浴を手伝っていたんじゃないのか」
訝しげに尋ねられて、ドキリとした。
「……ええ。実は少し、逆上せてしまいまして。許可をいただいて、休憩させてもらうことになったのです」
「逆上せた?」
訊き返し、ウォーレンは首を傾げた。
「言われてみれば、少し顔が赤いな。大丈夫か? 今日は夜会の予定だろう」
「……それまでには落ち着いていると思いますので、お気になさらず。ところでウォーレン、一つ頼みごとをしてもよろしいでしょうか。あと十分もすればアイル様はお風呂から上がられると思いますので、風邪を引かないようお体を拭いて、ベッドで寝かせてあげてほしいのです」
「ああ、もちろん構わない。疲労が溜まっているんだろう。夜会まで少し休むといい」
快く引き受けてくれたウォーレンに頭を下げて、フィルはそそくさとその場を後にした。今度こそ一直線に自室へと戻り、力なくベッドへと腰を下ろす。
瞬間、さっき見たアイルの――いや、リースの裸体を思い出して、ぞくりと体が震え上がった。
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