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未去勢で発情状態になったペニンダが抑制剤も飲まず、ひたすら射精を我慢するなんてのは拷問に近かった。部屋に戻って以降急速に激しさを増す性衝動を、フィルは荒い呼吸を繰り返しながらベッドの上でじっと耐える。
(ゴミ箱に廃棄されたものを食べるなんて下等な真似をする人間が館にいるのは不愉快だ)
ウォーレンがあの言葉を、フィルを貶めるために口にしたのではないことはわかっている。去り際にシモンがかけてくれた言葉の通り、ウォーレンはフィルを信頼してくれていて、だからこそ、そんな生ゴミ塗れの抑制剤まで飲む必要はないと引き止めてくれたのだ。
きっとリースがいても同じことを言ったはずだ。そう思う気持ちからフィルは抑制剤の服用を断念したが、今となってはやはり、あのときの判断を後悔している。
いくら身の回りの人間に信頼されているからといって、ペニンダの性衝動はどうにもならない。もちろん、だからといってリースやその他使用人に襲いかかるつもりなんて一切ないが、マスターベーションさえろくに行えない今の状況はあまりにも辛すぎた。
――いやしかし、きっと抑制剤を飲んでいたとしても……。
厨房での騒動から、まだ一時間も経っていない。一度発情状態になったペニンダが慌てて抑制剤を服用したとしても、効果が現れ始めるのには約三時間近くかかる。どちらにせよ、まだしばらくこの苦痛を耐えなければならなかったことに変わりはない。
「く……っ」
ぱんぱんに膨れ上がった中心がズボンに圧迫され、激痛が走った。
――ま、前を緩めなければ……。
力ない手つきでフォックに指をかけ、ファスナーを引き下ろす。顕となった下着には、すでにいくらかのカウパー液が染み込んでしまっていた。
仕方なく下着もほんの少しだけずらし、勃起したペニスを露出する。そのまま擦って中のものを出してしまいたい衝動を、歯を食いしばって必死に耐えた。いくら誰も見ていないからとはいえ、リースの住むこの館でみっともなく精液を垂れ流したりはしたくない――
震える体で横になっていると、ふいにこんこんとドアをノックする音がした。
「フィル、俺だ。開けてもいいか?」
尋ねる声を聞いて、フィルは即座に部屋の時計へと目を向けた。
――二時七分……!
つまりこの聞き慣れた声は、アイルのものではなくリースのものということだ。
「な、なぜっ――なりません坊ちゃま! シモンから話を聞いていないのですかっ?」
そうでなくとも、きっとリースは今の状況が予測できているはずだ。肉体が自分のものでなくなっている間も、アイルの言動は全て把握しているのだから――
「話なら聞いた。状況も理解している。だからこそ、心配で駆けつけてきたんだろう」
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