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マスカレードにて②

「罰ゲームは――そうだなぁ、過去の恋愛について一つ話すっていうのはどう?」  冬馬は自分の顔の前で右手の人差し指を立てて「1」を作る。   (なるほど、そういう感じか……でも) 「僕は恋愛したことないので、何もお話できることはありませんよ」    千景がさらりと返す。 「え?チカちゃん、恋愛したことないの?一度も?」  冬馬は訝しげに首を傾げる。 「はい。一度もないです。毎日忙しくて恋愛なんてする暇ありません」  千景は半分投げやりな様子で伏し目がちにぽつりと言った。 「そっか……それなら違う罰ゲームにしよう。うーん、じゃあ僕が勝ったらチカちゃんの誕生日教えて!」  冬馬は千景の様子で何かを察したのか、話題を変える。冬馬は、無理に千景の内面に踏み込んでこようとはしない。一定の距離を保とうとしてくれているのがわかる。これはきっと冬馬の優しさなんだろうなと、千景は思った。 「誕生日くらいならいいですよ」 「やった!!」    冬馬は弾んだ声を上げ、ガッツポーズして喜んだ。  しかし結果は、予想通り冬馬の惨敗だった。

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