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偏愛Ⅲ≪竜side≫3
ある日の放課後、今日はハルカさんが迎えに来てくれる日だから職員室へ向かった。
応接室の前からハルカさんの声が聞こえてきた。
「いや、まってよマサくんこれテスト量多くない?90分で終わるこれ?可愛い顔してドSなのマサくんらしくて好きだわー」
「哀沢くんとケンカしちゃってさ…八つ当たり」
「だからってこのテストの問題数多すぎだしむずくない?マサくんの生徒じゃなくてよかったー」
「あ、竜くんきたよ。バイバイ」
もし哀沢先生と山田先生が別れて、山田先生がハルカさんのこと好きになったら俺はもう必要ないのかな。
ハルカさんの1番ではいられないのかな。
住谷さんと付き合えばいいのにとか思ってたくせに、本当は不安で不安でたまらない。
「ハルカさんは山田先生とキスしたことあるんですか?」
「え?あー……まぁ…ある、けど」
住谷さんにはキスをさせなかったのは、山田先生とのキスを上書きされなくなかったから?
そのぐらい山田先生は特別?
じゃあ、俺とのキスは?
応接室で山田先生ともキスしてるの?
―…俺は何番目?
マンションの駐車場につくなり、降りずに運転席にいるハルカさんにキスをした。
そして車を降りて、エレベーターの中でもキスをする。
玄関を開けるなり、お互いに荷物を落として玄関で激しいキスをし続けた。
「ハルカさん、もう1回…」
「いやもう2回ヤッただろ?」
玄関でのキスからそのまま寝室へと移動し、気付けば帰宅して2時間が過ぎていた。
ハルカさんは2回イキ、俺は何回イッたか分からない。
けど、俺はなぜかそれでも物足りなかった。
「俺の体、飽きました?だったら他にハルカさんがして欲しいことがあればします」
「いや、飽きてねぇけど…お前、体もたないぞそんなんじゃ」
「俺、ハルカさんにはお世話になってるから…ご奉仕したくて…こんなことしか出来ないから…」
「何回イッたんだよ。5回はイッてる。喘ぎ声で喉やられたらどうすんだ。JEESのボーカルさん」
そう言ってハルカさんは俺に優しいキスをしてベッドを降りた。
飽きられないように体だけは満足させたい。
俺を刻み付けたい。
「あー、色々ベタベタ。一緒に風呂入ろうぜ」
「はい」
だってハルカさんは俺が好きなんでしょ?
ハルカさんの一番は俺なんだよね?
聞きたいのに、聞けない―…
「今日ハルカさん出かけるんですよね?」
「あぁ。兄貴に呼び出しされて飲みに出かけるけど…一緒に行くか?」
「山田先生もいるの?」
何聞いてんだろ、俺。
別にいたっていいのに…
「マサくんは用事あって来ない。兄貴と二人とか気まずいからいて欲しかったけどな」
「俺はテスト前だし、からあげ大量に残ってるからそれ食べて勉強します」
「そっか。じゃあ行ってくる」
そう言って飲みに出かけたハルカさんは、深夜1時になっても帰ってこなかった。
俺、ハルカさんがいないと眠れないんだけどな…
でも最近よく眠れているから、睡眠欲求が出てきて眠いかも。
俺は、さっきまで着ていたハルカさんの服を見つけてそれを抱きしめながらベッドに横になった。
ハルカさんの匂い…落ち着く…
メトロノームまではいかないけど、安心する…
「おっそ…」
時計を見て無意識に呟いている自分がいた。
そして深夜2時、インターホンが鳴る。
ハルカさんやっと帰ってきたんだなと思って玄関を開けると、そこには想像していなかった人物が立っていた。
「あー、竜くんまだ起きてたの?」
山田先生―…
「ごめんね哀沢くんと、ハルカちゃんめっちゃ飲んじゃってつぶれちゃってさー」
なんで山田先生がハルカさんと一緒にいるの?
用事があって飲みにこないって言ってたのに。
「うちに泊まる?って聞いたんだけど竜くんがいるから帰るの一点張りで連れて帰ってきた」
「マサくん…俺まだ飲める。兄貴に勝つ」
「ばか。もー、負けたでしょ。ハルカちゃん家ついたよ!重いんだけどー!靴脱いで」
酔いすぎて立てないハルカさんと、そんなハルカさんに肩を貸している山田先生を見て内心穏やかでいられなかった。
「寝室そこだよね?」
ハルカさんの靴を脱がせながら、部屋を指差す。
どうして寝室の場所知ってるの?
使ったことあるの?
「俺が運びます」
「重いからいいよ。お酒臭いし。ねぇ歩いてよ!酔っぱらい」
「マサくん、まだ飲めるから」
「はいはい。うるさいよー。歩く歩く」
ハルカさんを抱えながら、ゆっくりと寝室へ向かい、ベッドの前で立ち止まる。
俺がいるのに山田先生に抱きつかないで。
「マサくん、結局おっぱいピンク色なんだっけ?」
「まーた言ってる。酔っぱらいじじい。哀沢くんに言うよ?」
「NO!NO!ごめん!」
「くたばれじじいベーシスト!おやすみっ」
そう言って山田先生は、ベッドにハルカさんを投げ飛ばした。
「竜くん、明日学校大丈夫?いつもハルカちゃんが送り迎えでしょ?」
「歩いてバスでいきます」
「そう。じゃあ早く寝なね。哀沢くんも起きなさそうだなぁ。おやすみ」
山田先生はため息をついて、部屋を出ていった。
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