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偏愛Ⅲ≪ハルカside≫1

竜と初めてセックスをした日から、何度竜を抱いたか分からない。 「―…ありがとう…ございました」 でも毎回竜を抱く度に、ふとした時に震え、そして最後にこの台詞を吐かれる。 だからそれが消えるまでは、俺から襲うことはしなかった。 竜からのキスが合図になりセックスをしていたが、いつしか父親の幻影への「ありがとう」が無くなり、徐々に震えも無くなった。 ようやく、俺から竜を襲うことが出来る。 今日初めて、俺から竜を抱くんだ。 「ハルカさんから誘ってくるの…初めてじゃないですか?性欲無いんだと思ってました」 性欲まみれの人間ですが? 毎日竜でヌいてましたが? ―…なんて言えるわけもなく。 「いや、本当は毎日抱きてぇんだけど…」 「じゃどうして?別に俺、ハルカさんに抱かれるの嫌じゃないのに」 「…お前気付いてなかったのか?毎回震えてたの」 「俺が?」 やっぱり、無意識だったんだな。 父親の調教が染み付いて離れていなかったんだ。 俺は竜の頬を触りながら言った。 「そうだよ。抱く度に徐々に震えは収まってきたけど、最近やっと震えなくなったの確認したから。竜の震えが無くなってから俺から襲うって決めてた」   「優しいんですね、ハルカさん」 「あの冷血ドSな兄貴の弟だぜ?優しいわけねぇだろ」 まぁ、確かにあの兄貴ほど冷血ではねぇけど。 和らいだ竜に優しくキスをしてから、深いキスを何度も何度も繰り返した。 ようやく竜を抱ける―… そして俺がキスを止めて竜の顔を見た瞬間、 インターホンが鳴った。 ―…荷物頼んでたっけ? そう思って、俺が玄関をチラリと見ると竜は腕を回してキスをした。 「キス―…続きして…」 同意見でございます。 俺たちは何回もインターホンを無視してキスを続ける。 キスの回数と同じぐらいインターホンは鳴り続ける。 「ハルー!ハル!ハル!ハールーカー!!開けてよぉ!いるの知ってるんだからねぇ!!」 最っ悪だ―… 「…あいつ…よりによって今かよ」 俺は舌打ちをして、キレながら玄関へと向かい、ドアを開けると予想していた人物が立っていた。 「真理奈!帰…」 「おっじゃましまーす!」 中学の同級生の伊達真理奈。 芸名は住谷まり。 最近じゃグラビアの中でもトップに君臨している。 「お前なぁ!来るなら連絡しろって」 「やーだー冷たぁい。久しぶりにハルを慰めてあげようと思ってぇ」 「帰れ!詐欺師!」 3つも年をごまかしてよく通じるよな。 そんでもって、男まさりな性格のくせにメディアじゃ女ぶって偽ってまるで別人。 俺と真理奈が言い合いをしていると、竜がリビングに来た。 「…住谷まりさん?」 「えっ!うそ!竜ちゃん?本物!?かわいー」 しまった。 真理奈はJEESのファンで、中でも竜のファンだった。 「なんでハルと一緒にいるの?え?」 「うるせーんだよ。黙れ酔っ払い」 俺は、竜に抱き着こうとした真理奈をぐいっと引っ張ってソファーへと投げ飛ばした。 そう、俺はこいつを女だと思っていない。 女の姿をした男だと思っている。 空手は黒帯三段、中学時代は音楽を聴いている時以外は川で魚釣りや、森へ虫採りへ行くような女。 「あ、竜。住谷まりは実は俺とタメだから。こいつ3つ年齢偽ってやがんだよ。詐欺師め」 「ひどーい。中学の時の同級生なんだからもっと優しい言い方してよね。事実だけどさー」 「帰れよ真理奈。彼氏?またケンカか?」 「別れちゃった♡」 ほんっと長続きしねぇなこいつ。 そりゃ、別れるか。 男どもはこの巨乳に騙されてんだろうな。 だってこいつ性格男だもんな。 テレビと真逆だしな。 「久しぶりにハルのこと癒しにきたのになー。竜ちゃんがいるんじゃ何も出来なぁい」 「マジで帰れよ。つか帰って。お願い」 俺が真理奈を説得した頃には、お互い今日はヤる気分にならずに暗黙の了解で寝た。 くっそ真理奈め… せっかく今日は俺から竜を抱こうと思ったのに。 女じゃなかったらぶっ飛ばしてたぞ。 そんな俺のその日の夢は、怪力真理奈に逆にぶっ飛ばされる悪夢だった。

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