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偏愛Ⅴ≪ハルカside≫1

射手座と獅子座の相性は良くない。 B型とA型の相性も最悪。 占いとか、迷信とか信じるタイプではないけど 何で、こんなにも嫌われちまったのか―… 「時計…欲しかったんじゃねぇのかよ」 時計は竜の好きなブランドだったし、もらって悪い気するはずがない。 それが、あんなに拒否されるとは思わなかった。 俺はお前の笑顔が見たかっただけなんだ。 「ハル、あんた顔死んでるよ」 グラビアでセブ島に行った真理奈が土産を俺に渡しながら言った。 「うるせぇ。もともとこういう顔だわ」 俺はこんなにも余裕がないのかって、最近つくづく思う。 いい大人が恋愛で悩むなんて馬鹿げてる。 そりゃあ、あんなことされれば俺だってさすがに傷つく。 竜を傷つけたのは俺だけど。 「なぁ真理奈。久し振りに抱かせてくれよ」 もう何でもよくなった俺は、真理奈をソファーに押し倒した。 「は?」 「むしゃくしゃしててさ。考えたくねぇんだわ色んなこと。お前今彼氏いないんだろ?だったら…」 「ふっっっっっっっざけんな!!」  真理奈の首筋に吸い付こうとした瞬間、腹部に激痛が走って俺はソファーから転がり落ちた。 「いっっっってぇな!怪力女!」 こいつ、本気で足蹴りしやがった… 恋愛のせいで仕事に身が入らないし、スタジオで会うと避けられるし。 リセットできたらどんなに楽か。 「…竜ちゃんがいるでしょ!?」 痛い所をつきやがる。 その話には触れるな。 「連絡…つかねぇんだよ。相当嫌われた。諦めるか諦めないか毎日そんなん考えんの疲れたんだよ!」 電話しても無視。 ショートメールも無視。 スタジオでも無視。 苦笑いするしかねぇわ。 「だから黙ってとりあえず抱かせ…」 「ふっっっっっっっざけんな!!あたしはそんな軽くねぇーんだよ!!!!」 今度は横腹を殴られ、さすがに予想していなかった場所への鈍い痛みが広がる。 「いっっっっってぇ!!お前なぁ!?武道をたしなんでいるやつが2回も全力で人を殴んじゃねぇよっ!」 「好きだから離れたんだよ」 訳の分からないことを言う真理奈。 好きだから離れた? ふざけんな。 「は?そういうのいいから。もうさ、脱げって。あ、お前脱がされる方が興奮すんだっけ?お前の好きなバックでめちゃくちゃヤッてやるか…ら…っ!?」 真理奈が再び構えるのを見て、俺は無意識に防御の体勢に入った。 「おー、止めて。拳は閉まって、な。真理奈。真理奈ちゃん。真理奈さーん。―…つぅか、お前に何が分かんだよ。こっちは嫌いって言われてんだよ」 「…っ、あたしは真実を知ってるのよ!」 今にも泣き出しそうな顔してる真理奈。 「なんだよ、真実って…」 何がどうなってる? 「ダメだ…あんた達、辛くて見てらんない…」 ボロボロ涙を流して、子供みたいに泣きじゃくって。 急にどうしたっていうんだ。 何があった? 真理奈の姿に嫌な予感がし、泣いている理由を聞き出すことにした。 「言えよ」 そして泣き続ける真理奈から真実を聞いた。 「御崎が…?」 「そうよ」 御崎が竜を犯して、ビデオを撮って脅迫してると信じられないことを真理奈は言った。 「竜ちゃんは、ハルに迷惑かけたくないから離れたんだよ」 「待てよ。何で御崎が竜を?意味わかんねぇ」 御崎は高校時代からバンドやってて知ってる。 竜のことだって気にかけてくれてる。 よく飲みに行くくらい仲がいい。 頭の中が混乱している。 「御崎に直接聞きなさいよ」 御崎は竜の先輩でもあるし、謎が深まる。 未だに信じられない。 けど、 「マワされて、人に気を使って、自分を隠して傷ついて…きっと竜ちゃんダメになっちゃう」 真理奈は嘘をつかない。 誰だろうと、竜を傷つける奴は容赦しない。 それが本当なら俺は御崎を許さない。 「お前の話、本当なんだな?」 「嘘ついてどうするのよ」 何か俺に出来ることがあるなら行動したい。 竜を救いたい。 もう苦しまないで欲しい。 その一心で、無意識のまま駆け出そうとすると、真理奈に腕をつかまれた。 「待って、御崎のとこに行くの?」 「そうしろってお前が言ったんだろ」 「あたしも行く。たぶん、ハル一人で行ったら我を失いそうだから」 俺は真理奈の言葉を信じて、御崎に会いに御崎のマンションに行った。 「ハルカ!」 俺が真実を聞いたことを知らない御崎は、俺の訪問を歓迎した。 でも、真理奈から真実を聞いた俺は冷静でいられなかった。 「出せよ」 「は?何を?」 「ビデオカメラ」 少し間をおいて御崎が話し出す。 「なんのことだよ?」 こいつ―…しらばっくれるつもりか。 「お前が何のために竜を犯したか知らねぇけどな、これ以上俺を怒らせるな」 御崎の胸ぐらを掴んで、髪の毛を掴んで嚇しをかける。 今すぐにでも御崎を殴りたいくらい感情が高ぶっていた。

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