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偏愛Ⅴ≪ハルカside≫2
「俺が竜を大事にしてるの知ってたはずだよな御崎?」
「なんで…竜なんだよ」
御崎が呟く。
「お前はいつも竜のことばっかり。俺だってお前を見てるのに…」
「は?」
「好きなんだよお前が。昔からずっと」
御崎は俺から目をそらし、俯きながら言った。
…ちょっと待て。
色んなことが起きすぎて、頭が混乱しまくる。
「お前を取られたくない。誰のものにもなって欲しくないんだよ…」
「だからって竜を犯したのか?」
「ハルカが好きなんだよ…ネットに書かれたこと信じてハルカから離れるようなやつと俺は違う」
緋禄が死んで、
歌えなくなって、
事務所の信頼してた先輩に犯されて、
俺を断ち切って、
―…辛かったな、竜
「出せよビデオカメラ。俺はお前を殴りたくて仕方ねぇんだ。これ以上怒らせるな」
御崎の涙は視界に入らなかった。
御崎は俺から離れてビデオカメラを取りに部屋へ戻る。
「てか、お前こんな汚れたやつ好きになったの?」
御崎は吹っ切れたように笑いながら俺にビデオカメラを渡した。
「父親と相当ヤッてたんだろ竜?犯されながら、最終的に俺らのこと父親だと思ってたぜ?」
あぁ、最悪だ。
最近消えかけた父親の幻影。
「しまいにゃ、ありがとうございましたなんて礼言ってさぁ。こんなやつ好きなの?愛せんの?気持ち悪ぃ」
父親だと錯覚するまで犯したのか?
「相当父親に調教されてたぞ、あいつ。何回もイッて。体がよかったのか?あぁ、確かに体は良かったか。ははっ」
あぁもう、
こいつの原型留めないぐらいに殴って…半殺しにする。
「ハル!ハル!ダメだよ!」
ハッと我に返ると、真理奈が御崎をかばって俺の腕を止めていた。
「こいつ傷つけたら、MAR RE TORREの活動も停止になる!それに御崎の親はJEESの事務所の社長だよ?竜ちゃんだってどうなるか分かんない!冷静になって!」
真理奈にそう言われ、脳内の0.1%だけ冷静でいる神経を研ぎ澄ます。
興奮で息を切らしながら俺は真理奈に問いかけた。
「真理奈……思いっきり殴っても大丈夫な場所、教えろ」
「え?」
「傷が目立たない場所で一発だけ全力で殴ってもいい場所教えろっつってんだよ。早く言え。じゃないと今すぐ半殺ししちまう」
今こいつに出来る最大限の制裁を喰らわしたくて、真理奈のアドバイスを待つ。
尋常じゃないほどの俺の苛立ちに、真理奈は少しビビりながら口を開く。
「み…みぞおちに一発。これで人間動けない。あとにも残らないし、障害も出ない。ただ、力加減はする事ってあたしは教わった」
「なるほど。俺は力加減が必要か?」
「あんた素人でしょ?力加減、必要ナシ!」
「Okey」
誰が一番傷ついたかは目に見えてる。
俺は単純だから、大切なやつを守ることしか出来ない。
友情は壊れても構わないと思った。
「もう手遅れだよ御崎。じゃあな」
そう言い残してその場を去り、真理奈を家まで送ったあとビデオを持って兄貴とマサくんに会いに行った。
「ごめん、ふたりとも…俺一人で冷静に見れる自信無いから。だから一緒に見てもらっていいかな」
二人に状況を説明し、マサくんがビデオカメラをTVに出力して再生ボタンを押す。
逃げようとする竜、
嫌だと言い続ける竜、
俺の名前を呼ぶ竜、
「なにこれ…ひど…竜くん…」
マサくんは涙を流しながら見ていたが、俺と兄貴は表情ひとつ変えずに無言で見続けた。
必死に抵抗しながら、俺の名前を呼んで容赦なく犯されて。
「ハルカちゃん…大丈夫?」
俺はマサくんからの問いかけに、深呼吸をしてから無言で頷いた。
正直今、冷静にこれを見ていられるのは二人がいるから。
いなかったら俺は多分御崎のこと殺してたかもしれない。
だって…
『ありがとう…ございました…父さん』
このせいで、消えかけてた父親を思い出してんじゃねぇか。
必死に抵抗したんだな竜。
だからあの時、お前は俺のリストバンドを着けてたのか。
抵抗して赤くなった両手首を隠すために。
「ハルカさん」と、何度も何度も泣きながら俺の名前を呼んで
竜、お前の声は泣く為にあるんじゃない。
誰かを癒す為にある。
もう辛い想いはさせない。
だから安心しろ。
見終わった頃には深夜になっていて、そこにいた全員が心が穏やかでないことは分かった。
1杯の水を飲んでからマサくんが口を開いた。
「ハルカちゃん…あのね…ずっと気になってたんだ。あのハルカちゃんのエゴサーチの結果。ハルカちゃんは御崎くんに頼んでるっていってたけど、どうして犯人分からないのかなって」
俺のネットの書き込みのことは、マサくんも知っていた。
犯人を探そうか?とマサくんに聞かれたが、御崎がハッキングとか得意だから犯人探しを協力してもらっていた。
「俺、ちょっと前に独自に調べてて。そしたらさ、犯人彼だったよ。御崎くん。書き込みしてたの。ハルカちゃんの人気を落としたかったのかな」
俺が嘘のネットの書き込みが嫌いで、それをあいつも知っていたのに、その犯人が御崎?
あぁ、あいつを殴ったあとでよかった。
それを知ったら真理奈がいても俺は止まらなかっただろう。
「ごめんマサくん…俺あんまりマサくんにこういうの頼みたくないんだけどさ…」
マサくんの権力は使いたくない。
アスティ時代の動画がネットにあがる度に、俺のトラウマ回避で動画を削除してもらっているだけで充分だったから。
でも、今回は―…
「こいつら3人、社会的制裁与えてほしい」
「もちろんそのつもりだよ」
「ありがとう」
後日分かったことだが、俺が歌えなくなったあと御崎はアスティのヴォーカルとして一緒にバンドを組みたかったらしい。
しかしMAR RE TORREが結成され、それが叶わなかったため俺が叩かれて人気が落ちて脱退した時に自分のバンドに入れたかったと。
とにかく俺と一緒に活動したくてやったと知らされて、もう二度と俺と関わるなと思った。
マサくんのおかげで竜の事務所の社長は別の人に代わり、御崎もバンド活動を続けることが出来なくなり、財産も失っていた。
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