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偏愛Ⅴ≪ハルカside≫5
歌詞は切ないのに、曲調は相変わらずロックでアスティらしいなと自分でも思った。
あぁ、最高だよ。
ライブって最高に楽しい。
音楽って最強。
どうか、竜に伝わりますように。
そして宝がステージに上がり、再びMAR RE TORREのライブを続行した。
「お疲れ様ー!てかハルカ君、アスティの書き込み凄いよー!」
ライブが終わり、楽屋で音楽関係者がSNSの投稿を見せる。
MAR RE TORREのゲリラライブでさえトレンドになっているのに、合わせてアスティも急上昇ワードに上がっているらしい。
「アスティ再活動するの?」
「いやー、しないです。今回だけ」
「そうなんだ。勿体ないなぁ」
確かにめちゃくちゃ楽しかった。
いつかまた、歌えたらいいなとは思う。
「ハルカ!」
音楽関係者との会話の途中で、宝が俺を呼ぶ。
振り返ると、手を繋いで誰かを連れて来ていた。
「竜!」
いたんだ、竜。
来てくれてたんだ。
未熟な歌声をあのJEESのボーカルである帝真竜に聴かれたかと思うと、恥ずかしいやら何だか不思議な感情が芽生える。
「来てくれたんだな」
そう言って、竜の髪をぐしゃぐしゃにした。
久しぶりに見た竜は少し痩せていて、俺の目を見ると俯いて泣きそうな顔をしていた。
でもお前がここに来てくれたってことは…そういうことだよな?
「…みんな!俺、帰るわ。あと頼んでもいい?」
「了解」
「帰るぞ、竜」
俺はメンバーにそう言って、楽屋を後にした。
そして竜の手を引いてタクシーに乗り込む。
「待って、いいんですか?打ち上げとかは…?」
ばーか。
今すぐにでも泣き出しそうで震えそうなお前見て、帰らない選択肢ねぇだろ。
手をずっと握ったまま、無言でそう思った。
タクシーを降りて、俺のマンションに着いて部屋へと向かう。
鍵を開け、部屋に入って玄関ですぐに俺は竜を抱きしめた。
「お帰り、竜」
もう二度と放さないぐらい、離れていかないように強く。
「ハルカさん…ごめんね」
いらねぇよ、そんな言葉。
俺の力はさらに強まる。
「ごめんなさい…迷惑たくさんかけて…」
あぁ、もう―…
「ごめ…、ん」
竜がまた謝ろうとした瞬間、俺はキスをした。
息が出来ないくらい激しいキスを。
「謝るな。大丈夫だから」
「ごめ…」
また謝ろうとする度に口を塞いで、舌を絡めて。
謝罪なんて脳裏に浮かばないように、キスで全身を集中させて。
「ん―…ふ、ぁ―…」
もう最後のキスなんじゃないかっていうぐらい、お互いに玄関で何十分もキスを続けた。
「ハルカ―…さん…」
口元をぐちゃぐちゃにして、息を切らして顔を赤くして顔をあげた竜が言う。
「このまま一緒に…お風呂…」
それは、風呂場で処理をしたいという意味だということを瞬時に理解した。
そのまま竜をお姫様抱っこし、バスルームに移動した。
お互い服を着たままシャワーを捻り、濡れた状態でキスをしながら服を脱がせ合う。
「ん―…ふ、―…ぁ…ん」
洩れる吐息が愛しい。
キスをしていた唇を愛しい首筋へと移動させ、舌を這わせて耳を舐めると竜の体がビクッと動く。
「あっ…は…ハル、カさ…」
そして舌を立てて耳から首筋、首筋から鎖骨をなぞり、乳首へと移動させた。
「アァッ!んっ…」
立っていられない竜は、浴槽の淵に腰を落とした。
「あぁ、ん!アァッ!イク…い、く」
乳首を軽く噛り、硬くなった竜のモノを扱き続けた。
「いや、―…あ、ハルカさ…んっ、イクっ、あっ―…イクッ!」
そして竜の精液がシャワーを蔦って流れていった。
「待って…ハルカさん。…俺、準備するから…先に待ってて」
そして竜は深いキスをしてから、トイレへと向かった。
俺は先に寝室へ行き、竜が来るのを待った。
しばらくしてバスタオルを巻いて寝室へ竜が来て、俺の待つベッドに上った。
ギシッとなる音だけで興奮する。
「ごめん…なさい、ハルカさん…俺…」
バスタオルをはだけさせた竜は、ベッドに寄りかかっている俺に抱きついた。
「俺…ここ、で……知らない…人に…」
今にも泣き出しそうな声で、あいつらに犯されたことを思い出して震えていた。
「全部知ってるから。言わなくていい。ごめんな、傍にいれなくて。辛かったよな」
「ごめ…なさい…俺―…」
俺は竜を抱きしめて頭を撫でながら言った。
「もう離さねぇから。絶対。守るから、俺が」
そして耳元で囁く。
「好きだよ、竜」
竜は俺のその言葉を聞いて、俺の顔を見て驚いたあと、笑顔で泣いていた。
久しぶりに見た竜の表情がコロコロ変わるのが愛しくて、俺も笑った。
「もう俺は、ハルカさんのものだから…お願い…めちゃくちゃにして。嫌なこと忘れさせて」
そして竜はゆっくりと俺にキスをしたあと、再びその愛しい笑顔で言う。
「ハルカさん…好きです」
それは、2年半俺が待ち望んでいた言葉だった。
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