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偏愛Ⅵ≪ハルカside≫6
―8月某日
日本に一時帰国して入籍する日が近付いてきた俺は、ホテルで帰る準備をしていた。
「《ハルカちゅわーん!あーけなさぁい♡》」
日本に帰る準備をしていると、ヴァイアさんがホテルの部屋に入ってきた。
「《なんスか…?もうすぐ飛行機なんだけど》」
高そうなスーツと、ヘアメイクスタッフを引き連れて。
「《竜ちゃんのおばあ様、おじい様に挨拶するんでしょう?ちゃんとした格好で行きなさいよっ!》」
いや、飛行機の中からこんな正装で日本に帰れと…?
そう思いながら俺の部屋でメイクとヘアセットが行われ、まるでパーティーにでも行くんじゃないかという出来映えになった。
「《早く竜ちゃん奥さんにしてきなさいよ》」
「《ありがとう!行ってきます》」
数時間飛行機に乗り、竜の祖父母の家へと向かった。
やべ…緊張してきた…
深呼吸をしてからインターホンを鳴らすと、竜が迎え入れてくれた。
「おかえり、ハルカさん」
あ…この笑顔で緊張吹っ飛んだわ。
「こんにちは」
俺は竜に案内され、リビングにいる竜の祖父母に会釈をした。
「スーツ?どうしたんですか?撮影でもあった?」
ニコニコしてるけどなぁ、竜。
今から撮影以上のことするんだよ。
「お久しぶりです、ハルカさん。どうぞ座って…」
竜の祖母がお茶を用意して椅子を案内した場所に腰かけた。
再び緊張。
結婚すること、祖父母には話してないって竜言ってたしな。
すげー反対されたらどうしよう。
ヴァイアさん爆笑すんだろな。
そしてしばらくして、お茶を飲んでから深呼吸をして心を決めた俺は頭を下げて話し始めた。
「ご挨拶が遅くなってすみません。竜の誕生日に入籍をします。事前に何の報告もせず申し訳ありません」
あぁ、どんな反応してるのか分からなくて顔が上げられない…
俺は構わず話し続けた。
「俺はまだ22で世間知らずで、音楽しか分からないし、タトゥーも左腕にがっつりいれてます。親とも縁を切ってます」
でもこの気持ちだけは本気だから。
竜の家族はもうこの二人しかいないんだ。
なら安心して竜を俺に任せて欲しい。
「あんな報道のあと竜が男と結婚だなんて、世間から何て言われるか分かりません。でも竜は必ず幸せにします。何があっても守り抜きます。ですからどうか安心してください」
たとえ反対されたとしても、許してくれるまで通い続ける覚悟はあるから。
「それを伝えたくて、今日ここに来ました」
「ハルカさん…顔をあげてください」
そう竜の祖父に言われ、顔をあげると笑顔で俺を見つめていてくれた。
「あの男のせいで娘が精神疾患になって、緋禄も亡くなって、娘も亡くなって…竜まで死のうとしていたのを報道で知りました。でもあなたが救ってくれた。大切な孫を。感謝しかありません」
竜の祖母は嬉しさのあまり泣いていて、泣きながら竜の両手をぎゅっと掴んで言った。
「竜…これからたくさん幸せになりなさい。竜にはその権利があるからね」
「おじいちゃん…おばあちゃん…ありがとう。結婚しても、俺いつでも二人に会いに来ていい?」
「もちろん」
誰も悪くない。
悪いのはアイツだけだ。
アイツのせいで竜の家族はバラバラにされてしまった。
だけどこんな俺を認めくれて、竜を託してくれるのであれば…
俺はこれからも全力で、竜を守ります。
「ん…は、…ねぇハルカさん、役所終わっちゃうよ?」
俺のしつこいキスを付き放そうとするも、最終的に受け入れて舌を絡める竜が愛しい。
「も1回キスしてから。帝真竜との最後のキスを堪能させろ」
「もぉ…んっ…ん…どうせ帰ってきたら哀沢竜とのキスを堪能させろって言うんでしょ?」
「よく分かったな。じゃ、提出しに行くか」
8月21日、帝真竜は哀沢竜に生まれ変わり無事に俺と入籍を済ませた。
―5年後
MAR RE TORREとJEESは活動拠点をアメリカへと移動させ、その1年後に、アイツが世の中に出てくるタイミングで竜と俺が結婚していることを公表した。
それと同時に音楽活動をする際に帝真竜という名前から、RyUという名前に変更した。
そしてさらに2年後、
竜はギターと英語をマスターし、俺と一緒に
『遥かなる竜』という意味のDistant Dragon を結成した。
Distant Dragon、MAR RE TORRE、JEESの売り上げの一部は世の中の性犯罪で苦しんでいる人の為に寄付されることを公表。
竜は時間を作り、シェルター、カウンセラー、病院、施設、保護の強化を提案、打ち合わせに参加。
実際の被害者に会い、話を聞くため各国を訪問してる姿が広まり、世界的にも支持される人物となった。
「《みんなー!盛り上がってるー?》」
「《倒れず俺たちと一緒にぶっ飛ぼうぜー!》」
―今日も音楽に乗って俺たちは飛び続ける
【to be continued】
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