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偏愛Ⅶ≪竜side≫1
甘いものは嫌い。
父の味がするから。
父の大好物のシナモンは、特に―…
8月21日に無事に入籍して、MAR RE TORREの海外ツアーが終わり、ハルカさんと再び一緒に暮らし始めてもうすぐ3ヶ月。
「シナモンロールケーキ?」
「あー悪ぃ。もって帰れってスタッフがうるさくて。甘いの嫌いなのにごめんな。すぐ食って胃袋で抹殺するから」
ハルカさんは甘いものが大好きで、俺に気を遣って甘いものは買わないようにしている。
でも、本当は克服したい。
父の味じゃないって思えるようになりたい。
ハルカさんが口に運ぼうとしているシナモンロールケーキを、俺は無意識に一口かじった。
そしてすぐに飲み込んで、ハルカさんに深いキスをした。
「竜、大丈夫か?」
俺が甘いものを食べられない理由を知っているハルカさんが驚く。
「これからは甘い物を克服できたらいいな。ハルカさん、協力してくれる?」
「どうやって?」
これからは大嫌いな味を、大好きな人の味に変えて…
「俺が甘い物を食べる度にキスして。ハルカさんの味として上書きして欲しい」
「お前が震えなくなるまで、一人で甘い物が食えるようになるまで…もちろん食えるようになっても傍にいるよ」
甘党のハルカさんと一緒に、少しずつ克服していきたいから―…
「愛してるよ竜」
父を思い出す大嫌いな甘いものと、
父からの大嫌いな「愛してる」という言葉。
あぁ、ハルカさんで上書きされていく―…
何度もシナモンロールケーキと深いキスを繰り返した。
「もっと言って。もっとキスして…」
「愛してるよ竜」
「もっと」
「愛してる」
気付くと俺の目から無意識に涙が流れていた。
「…大丈夫か?」
そんな俺の姿を見たハルカさんが心配そうな顔をして覗き込む。
あぁ、
「甘い物って…こんなに美味しかったんだ」
ハルカさんがいるとこんなに美味しいのに、
安心できるのに、恐くて、震えそうで、
「時間かけていこうな」
「―…っ」
俺は今までの父との甘い思い出を吐き出すかのように、ハルカさんに抱きしめられながら何時間も声をあげて泣いた。
父は逮捕されて、
俺はハルカさんのものとなり、
たくさんの人に守られる環境にいて、
もう父の恐怖は無いはずなのに、消えない―…
「やめて…父さん………!…あっ…ハル…カさん…ごめんなさい」
後ろから指を挿入されただけで過去のトラウマが甦る。
やはり顔の見えないセックスはどうしても父だと錯覚してしまう。
「…ハルカさん、俺…また―…ごめん」
「大丈夫だよ。無理するな」
「嫌だ。絶対克服する」
寝室のスピーカーから大好きなアスティの曲を流しているのに。
俺を抱いてるのはハルカさんだって分かってるのに。
どうしたら克服できるんだろう―…
「んじゃー…鏡の前でヤってみるか?それなら俺の姿分かるし」
「え……」
全身鏡をベッドの前に移動させ、背後からハルカさんが俺の耳を舐めながら俺の足を開く。
「ほら竜、もうすげぇ勃ってる」
「や…恥ずか、し…ん」
そして後ろからイヤらしい視線を鏡に向けて首筋に吸い付く。
ローションでヌチャヌチャになった俺のモノを左手で後ろからゆっくりと扱き、右手は乳首を弄る。
「やっ、ん…ハルカさ、あっ、アッん...」
利き手ではない左手の動きが読めないのとは対象的に、右手の乳首は摘まんだり乳頭の側面を弾いたりを繰り返される。
「アッ、んんっ、や…動き、変っ―…んっ、アァッ。イッちゃう…ふぁ…イ、ク―…イクッ!」
「あー、ザーメン出てる出てる。俺にうしろから手で扱かれて乳首弄られて…可愛すぎんだよな俺の嫁♡」
「やっ…あ、出てるぅ!手ぇ、止め…てっ、ハルカさんっ…」
鏡で自分の精液が飛び出る瞬間を、ハルカさんが喜んで見てる姿に更に興奮して。
てか、ハルカさん舌なめずりして笑って…めちゃくちゃ楽しそう。
「はーい、次は指が入るよ…すんなり入った。広げてくぜ」
「恥ずか…しいっ…や…ん…」
「そりゃ恥ずかしいことしてるからなぁ。分かるか?ここ、前立腺押されてんの。見てみ、鏡で」
「ふぁあっ!ん...やぁ、見ない、でっ…指、押さな―…んん…また、イく…からっ…やっ、脇―…吸わない、で」
ハルカさんは前立腺を押しながら、乳首もコリコリして、さらに俺の脇に吸い付く。
こんなの、鏡で見せつけられたら想像だけでイク―…
「まだイクなよ。挿れるから……よっと」
「――ッ……!!」
そしてハルカさんは俺を持ち上げて、背面座位で俺の秘部に硬くなった自身を押し当てて入り口を発見すると一気に腰を落として挿入した。
「はぅあっ!!ンンッ、アァッ、やぁ…イッちゃ…―イクッ」
「あ、挿れたらイッた?残念、俺ここからまだまだ動くから。鏡見てろよ」
ハルカさんと俺が結合している部分が鏡に映って、俺が射精してる瞬間や、ヌチャヌチャな結合部がイヤらしくて…
それ見たらまた勃ってる俺…恥ずかしい。
「あぁっ!ん、や、…すごっ、入ってる…あっ、ん…見えてるっ!俺に…ハルカさんのおっきいの、気持ちい、あっ、やぁ!イクッ!またイクッ!」
「お前の実況エロくてやばいわ…一回出す」
「熱い…ハルカひゃん…の俺のナカで―…ピクピクっ…出てる―…んっ!?や、またおっきくなっ…やぁっ!まだ動かないでっ!おかしくなる」
そう言うとハルカさんの温かい液体が俺のナカを支配した。
果てたばかりなのにハルカさんのモノはまだ硬くて、鏡に見えるように抜かずにゆっくりとそのまま動き始める。
「今俺のチンチンどうなってる?」
「ハルカさんのおチンチンっ、俺のナカ…じゅぼじゅぼってぇ!入って…奥グリグリって、んんっ!あっ…すごっ、ぬちゅぬちゅって、俺っ…ハルカさんの咥えてるっ!入ってるっ」
「やべ…鏡プレイ最高。言えたご褒美に本気の速度でチンチンじゅぼじゅぼって出し入れしてやるからな♪」
「ひぁっ!だめっ、それ…速いっ!じゅぼって、奥すご…当たるっ…あっ、ん…またイッちゃう、やだ俺…恥ずかし―…イく…イクッ」
常に全身鏡の前で父に犯されていたのに、ハルカさんの姿が目に入ると恐怖は無かった。
というよりも、父よりもハルカさんの攻め方の方がめちゃくちゃイヤらしくて、そっちが思い出せなくなってるからかも。
それから何日間か、全身鏡を利用してセックスを続けた。
もう全く恐くなくなったので全身鏡を無くして後ろから挿入しようとした瞬間、再びあのときの恐怖が甦る。
「やめ、て―、…父さんっ!―…あ…ごめんなさい」
「…やっぱ姿が見えないとダメだな。無理しなくていいんじゃね?」
「ごめんなさいっ…あー…もう嫌だ。旦那とセックスするのにいちいち体位を気にしなきゃいけないの…」
「後ろからヤりたいときは、鏡さんに出動してもらえばいいだろ」
気楽なハルカさん。
俺は嫌なんだ。
父がまだ染み付いてるのが。
全部、絶対に克服したい。
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