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偏愛Ⅶ≪竜side≫2

次の日の放課後、ハルカさんの仕事が押して学校まで迎えにくるのが少し遅れると連絡が入った。 俺はハルカさんが来るまで、応接室で山田先生と哀沢先生に相談をしてみた。 「ハルカちゃんが見えないと不安になってバックでエッチできない…かぁ」 「はい…申し訳なくて」 「竜、実の弟と生徒の性事情を聞かされる俺の身にもなってくれ」 「義弟が困ってるんだから相談乗ってあげていーでしょ!」 哀沢先生は、以前は俺を帝真と呼んでいたけど入籍後は竜と呼んでくれている。 それは俺の前の名字が、あの父親と同じだから思い出させないためにもという優しい理由だった。 そんなお義兄様とは真逆で、山田先生は目を輝かせて一生懸命考えてくれている。 「別にあいつとバックでヤラなくていいだろ。という回答しか出てこねぇな…」 「ダメ!バックも興奮するの!気持ちいいの!してる時、ハルカちゃんだって分かればいいんだよね?じゃ竜くんの手にハルカちゃんのタトゥー入れるとか?それ見れば落ち着くよね」 タトゥー…確かにそうかも。 後ろからされてるときに、俺の手の甲にハルカさんのタトゥーが入ってたら凄く落ち着く気がする。 「でも生徒がタトゥーって入れてもいいんですか?」 「規約違反じゃないからいーよ。てか、規約違反だとしても克服のためにならもう俺が規約変えちゃう♪」 「ハルカは嫌がるだろうな。嫁の体に針を入れるなんて」 「克服するための愛のしるしだからいーの!拒否権ないのー!」 そっか、それが一番いい気がする。 今度ハルカさんに相談してみよう。 「そういえばゲリラライブでやってたアスティの新曲よかったねー。昔の曲も久しぶりに聴いたら最高だけどさー!竜くん全部持ってる?」 「あ、ハルカさんが音源全部くれました」 俺もハルカさんが音源をくれて、最近よくアスティの曲を聴いている。 いつもセックスするときは、Bluetoothで飛ばしてプレイリストをスピーカーで流している。 「俺いちばん好きなアスティの曲はOvercomeなんだよねー。この歌詞がさぁ、哀沢くん片想い時代に頑張ってた自分を思い出すの」 そう言って山田先生がウォークマンを見せてくれた。 「…Overcome?」 俺の知らないアスティの曲名だった。 「山田先生…リスト見せてもらってもいいですか?」 先生からウォークマンを借りて全てのアスティの曲を確認すると、俺が知らない曲が4曲あった。 …何で? だって音源はハルカさんから全部だって言われてもらったのに… 「もしかして…Overcome知らなかった?…あ、そうか…この曲」 「姉貴が自殺未遂した時の曲の1つだからな。あいつはまだその曲を克服してないんだろ」 お姉さんが自殺未遂したときにかかっていたアスティの曲は4曲 ・Jellyfish ・Bitter sugar ・Overcome ・Tranquilizer この4曲は山田先生のウォークマンの中にあるのに、俺の知らない曲だった。 そうか、ハルカさんはまだ克服してないんだ。 「姉貴が一番好きなアスティのこの4曲さえもう一度歌ってくれればお互いに後悔も消えるだろうが…まぁあいつには無理だろ」 お姉さんはハルカさんが歌えなくなったのを自分のせいだと悔やんでいて、ハルカさんも自分のせいでお姉さんが自殺未遂したってお互いに苦しんでるんだ。 「そうだよね。歌えるようになっただけでも奇跡だもんね」 「山田先生…この音源ください」 俺はハルカさんに内緒で、山田先生からアスティの4曲をもらった。 ―夜 「手の甲に俺の左腕と同じタトゥー入れる!?なんで!?」 ベッドの上でハルカさんをメトロノームにしてる時にタトゥーを入れたいことを相談してみた。 ハルカさんはメトロノームを崩して驚いていた。 「左手は結婚指輪が見えるから安心だけど、右手の甲に…ハルカさんを思い出せるように。ハルカさんと同じタトゥー入れたら絶対安心できるから」 「竜の体に針を入れるなんて…おじい様方が何て思うか…」 「大丈夫。俺、もう嫌なんだ。ハルカさんをあの人と勘違いするの。だからお願い。絶対克服したい」 ハルカさんはため息をついて、しばらく黙って口を開いた。 「じゃあさ、俺も右手の甲に同じタトゥー入れるわ。後ろから抱きついた時に、俺の手だってちゃんと分かるようにさ」 「え?」 「それなら一番安心だろ。この際だからデザインは竜が考えてくれよ。そしたら二人で彫ろう」 幸せすぎる。 世界で一番愛してる人と、同じ場所に同じタトゥーだなんて。 俺は数日間、タトゥーのデザインを考えた。 完成したデザインを見せると、ハルカさんはそれを見て感心していた。 「お、いいじゃん。いつ入れに行く?」 「ハルカさんの…誕生日…12月4日に」 結婚記念日は俺が18歳になってすぐだったから、だからお揃いのタトゥーを入れるのはハルカさんの誕生日がいいと思った。 「まじで?感激だなそれは」 「俺、その日に絶対に克服したいから。ハルカさんだけを感じれるようになった記念にしたいから」 「協力はするけどさ。…無理はするなよ」 「うん」 お互いの誕生日を絶対に特別な日にするんだ。 俺は再びハルカさんのメトロノームを聴きながら眠りについた。

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