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偏愛Ⅶ≪ハルカside≫2
―ある日の夜
「手の甲に俺の左腕と同じタトゥー入れる!?なんで!?」
ベッドの上で俺をメトロノームにしてる嫁のまさかの発言に驚き、体勢を崩してしまった。
「左手は結婚指輪が見えるから安心だけど、右手の甲に…ハルカさんを思い出せるように。ハルカさんと同じタトゥー入れたら絶対安心できるから」
いや、そうは言っても…
俺はまだしも世間が、いや、竜の祖父母が何て思うか…
「竜の体に針を入れるなんて…おじい様方が何て思うか…」
「大丈夫。俺、もう嫌なんだ。ハルカさんをあの人と勘違いするの。だからお願い。絶対克服したい」
あー、この目は引き下がらない目だ。
俺はため息をついて、しばらく黙って口を開いた。
「じゃあさ、俺も右手の甲に同じタトゥー入れるわ。後ろから抱きついた時に、俺の手だってちゃんと分かるようにさ」
「え?」
「それなら一番安心だろ。この際だからデザインは竜が考えてくれよ。そしたら二人で彫ろう」
竜の手にタトゥーを入れたとしても、それはあくまでも自分の手で御守り代わりみたいなモンだから。
だったら、後ろから重なった手が俺だって分かるように俺に印を入れれば早い話。
竜は数日間、タトゥーのデザインを考えた。
とてもいいデザインを見せられ、俺は絵心が無いからマジでこういうの描ける人はリスペクトなんだよな。
「お、いいじゃん。いつ入れに行く?」
「ハルカさんの…誕生日…12月4日に」
「まじで?感激だなそれは」
「俺、その日に絶対に克服したいから。ハルカさんだけを感じれるようになった記念にしたいから」
「協力はするけどさ。…無理はするなよ」
「うん」
結婚記念日は竜の誕生日で、お互いにタトゥーを入れた日が俺の誕生日。
なんかもう、俺らの愛って特別すぎて幸せなんだけど…
―12月4日
俺の誕生日。
その日は竜は学校を休み、昼過ぎに知り合いの彫り師のスタジオへ向かった。
中へ入ると、久しぶりに見た全身入れ墨だらけ+スプリットタンのファンキーなやつが登場した。
「ヒャッハー。光栄だねぇ。JEESの帝真竜を掘れるなんて」
この人は、ヴァイアさんの専属の彫り師の弟子。
俺の左腕もこの人に入れてもらった。
まぁ、性格はアレだけど技術はある。
「イヤらしいスプリットタンを見せつけないでもらっていッスか?竜が怯えてるんで。掘る、じゃねぇだろ、彫る、の方な。ちゃんと彫って下さいね。痛くないように」
やべ、途中タメ口になっちまった。
「今の時代は技術が進化して痛くないし腫れないんだよ。まぁ先にハルカに挿れるか。竜くん見ててね。彼氏が俺に挿れられる様を」
「なんか俺に挿入するみてぇなニュアンスで物凄く嫌なんスけど…」
俺は色々掘られる覚悟で椅子に座り、竜は自分がデザインしたものが手の甲に刻まれていくのを見ていた。
2時間ほどくだらない談笑をながら施術して完成し、次に竜の番になった。
「竜くん、初めてだよね?皮膚という膜を突いても痛くないようにするからねぇ」
「処女膜みたいな言い方しないでもらっていッスか?ってか竜にタトゥーが…なんか自分の子供の処女が奪われる瞬間を見守る親の気分」
「ヒャッハー。どんな気分だよそりゃ」
「おい針動いてんのにこっち見てんじゃねぇよ!ちゃんと竜に集中しろ!デザイン狂うだろ」
この人が俺の10歳ぐらい年上なのに、竜のことになると親の気分になり、もう途中から敬語とか無くなっていた。
わざと竜の手を舐めようとしたり空いてる方の手を触ったりして俺を挑発している。
「竜ちゃんのタトゥーに俺のサイン挿れていい?」
「っざっけんな!いらねんだよテメェのサインとか。ちゃんと彫れ!」
「あームカつく。俺の方が年上なのにその態度。英語でハルカ嫌いって彫っちゃおっかなーん」
「いいのかそんな強気で?ヴァイアさんここに呼ぶぞ?お前のことくっそタイプって言ってたし掘ってもらえ」
「やだーー!!無理ーー!若い子のエキスがいいー!!」
ふざけた会話が続いて、あっという間に俺たちの愛のしるしは完成した。
「わー、ハルカさんと同じタトゥー」
タトゥーを入れ終わって感激している頃には、夕方になっていた。
俺たちはそのままホテルへと向かい、ディナーを済ませたあとに夜景を堪能しながらジャグジーで乾杯をした。
「ハルカさん、23歳おめでとうー」
「サンキュー」
乾杯したあとすぐに、竜は考え事をしているようだった。
「ん、どうした?」
「いや、今日って俺たちが始めて抱き合った日だなーって思って」
「あー、確かに。懐かしいなぁ。マサくんのプレゼントに感謝だな」
懐かしいなぁ。
毎日メトロノーム代わりになって、竜を抱く妄想ばっかりして一人でヌいてた時代。
まさかこの1年で付き合うだけでなく、結婚することになるなんて思わなかった。
17歳までの7年間マサくんを好きで、
19歳まで音楽漬けの毎日で、
20歳で竜に出会って好きになって、
22歳で竜と結婚
いやー、人生何があるか分からないもんだな。
「俺はもう妄想の中で犯してたけどな。つーか最初だって俺お前のこと縛ってヤろうとして…最低だよな」
「でもあれがあったから、俺はハルカさんに相談したり連絡したりするようになった。じゃなきゃ今頃まだあの人に支配されてただろうし」
俺は思い出を振り返って、後ろから竜を抱きしめた。
そして竜は俺のタトゥーの入った右手をゆっくりと舐めていた。
「えっろ…」
「あっ…」
俺はそれに触発されて、後ろから竜の耳を舐めながら、左手で乳首を刺激した。
もう乳首勃たせてエロ嫁め…
そう思って攻めていると、俺は無意識に竜の背中に俺の硬いモノをグリグリと押し付けていた。
「あー…挿れてぇ」
「だーめ。ベッドで。俺、準備するから先にいってて」
そう言って俺は先にジャグジーを出て、竜の事前準備が終わるまでベッドの上で待機した。
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