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第2話 社畜が異世界に転移②
最悪の事態しか想像できなくて早々に積んだ。
しかし、諦めるのはまだ早い。もしかしたら、チート系とか、生産系とか、ハーレム系とか至ってまともな異世界ファンタジーへの転移なのかもしれないし!
だが、現実逃避をしている俺の視界に入った小さな人影。それは街道の向こうから歩いて来る。
腹が出て、ごつごつとした体、汚らしい布を身に纏う子供の背丈くらいの緑色の物体……。
そう。
「ゴブリン!?」
「ギギギギギギ」
俺が大声を出したせいで、ゴブリンを刺激してしまったらしい。俺に気付いたゴブリンはこちらへ駆けてきた。
こんなん逃げるしかないと、俺は全速力でゴブリンから遠ざかる。
スリッパを干していたから、運よく厚手のルームソックスを履いて居る。それでも地面のごつごつが地味に痛い。完全に夢ではない。ここは現実で、俺は化け物であるゴブリンから逃げている。
運良くゴブリンの足はそんなに速くないようだが、俺の足も速くはないんだよ。
このままじゃ体力が尽きた時に追い付かれるじゃねえか!
ぞっとして鳥肌が立つ。背中に冷や汗を感じながら、どこまで続くかもわからない道を必死に走った。
遠くから蹄の音がする――。
馬を走らせる集団がこちらへ向かって来ている。遠くからわかった事は馬に乗っているのが5人で、女性が1人いるという事だ。身なりは立派そうだし、もしかしたら助けてくれるかもしれない。俺は手を振って、助けを叫んだ。
すると、先頭を走る馬が俺の横を通り過ぎ、一瞬でゴブリンを真っ2つに切断した。
剣に付着したゴブリンの血を忌々し気にふき取る男性は馬に乗ったまま俺を見下ろす。
「気を付けて下さいね。命はひとつしかないのですから」
そう言い残すと、彼らは森が茂る方角へ去って行った。
「……今の助けてくれた人って、グレンシアか? 隣の女性はゴブリンに攫われるヒロイン、アルディア王国のお姫様。グレンシアはその兄で……」
グレンシアは妹のジュリアを守る為にゴブリンと戦闘をする。プレイヤーであるゴブリンサイドが勝利した場合、死亡してしまうキャラクターだ。俺もプレイ中に可哀想だと同情したのを覚えている。拷問を受けた死に方が途轍もなく辛いものだった。
ここは……もしかすると、アンラ森林? ゲームと同じで、護衛が3人いた。
まさかこの後、グレンシアたちがゴブリンに襲われるイベントが発生するんじゃないよな? ゲームの中でもさ、1匹くらいなら簡単に倒せるんだよ。でも、ゴブリンは狩りをする時に群れで行動する。それが厄介なんだ。
あれ? もし、さっきの人が死んだら……。俺って恩人を見殺しにした、最低な奴になるのか!?
「そもそも、恩を返さないって気持ち悪いんだよな……」
こんなデカい恩を仇で返したら、他の人へ親切にした所で意味がない。
見捨てるっていうのは、仇で返すも同然だろ!
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