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第3話 社畜が異世界に転移③
「す……ステータスオープン!」
俺がもし、強かったりチートなら助けられるかもしれない。そう願ってステータス画面を出そうと声を張り上げた。よくある展開に、異世界人は自分のステータスが見られるというものがある。試しに言ってみたのだが、本当にステータス画面が現れるとは。
そこには補助魔法オールアップと従魔術のスキルが使えると書かれていた。他のHPとかMPはしょぼいけど! 補助魔法はもしかしたら使えるかもしれない。
俺はゲームでの記憶を絞り出し、イベントが起きるであろうデーマ洞窟を目指した――。
モンスターと遭遇しないよう、静かにこそこそと森を進んだ。俺がデーマ洞窟に辿り着けなければ、グレンシアは死んで、妹の姫はゴブリンの手籠にされるという最悪すぎる展開が待っているはずだ。
たぶん、この方角にデーマ洞窟があるんじゃないかって歩いてきたけどさ、もう2時間は歩いたと思うぞ。喉は乾くし、小腹もすいた。だからって、川の水やその辺の果物を食べる勇気は無い。異世界でその辺にあるもん食べたら毒でしたとか、その水は飲むと死ぬとか普通にありそうで怖いんだよな。
「ギヤア! ギギギ!」
ゴブリンの声?
喉の渇きと空腹が一瞬で吹き飛んだ俺は背を低くし茂みに隠れながら声のもとへと近づいた。
そこには、20体を越えるゴブリンと、護衛3人の死体。洞窟の壁と妹を背に戦闘をするグレンシアの姿があった。グレンシアは強いんだけど、数がいるから苦戦している。このまま彼の体力が削られていけば、やはりゲームと同じ展開になりそうだ。
「オールアップ……」
俺は茂みの中から、小声でスキルを発動させグレンシアに補助魔法をかけた。その時、グレンシアと一瞬目が合ったような?
力を得た事を悟ったグレンシアは剣を一振りし10体前後のゴブリンを薙ぎ払う。半分になったゴブリンたちは撤退をしようとした所を剣で薙ぎ払われ一網打尽となった。
光の鞭のような剣技にここがファンタジー世界で、命を守る為に魔物と戦うのが常なのだと思い知らされた……。
いや! ゲーム同様、ゴブリンの知能が高い様子に不安を覚えるが、今は助かった事を喜びたい。
まあ、俺の用は済んだからな、ヒーローはカッコよく立ち去るものよ。……まあ、このままじゃ飢え死にするかもしれないけどな!
とはいえ、助けたんだからお世話して下さいなんて厚かましい精神は持っていない。
お姫様は助かった事が嬉しくて泣いているようだ。
いやさ、1度でいいからお姫様を守ってみたいっていう俺の願望が叶っただけで嬉しいよ。子どもの頃によく妄想してたっけなあ!
「貴方は先程、ゴブリンと追いかけっこしていた方ですね」
頭上から声がして、俺は固まる。どう考えても、グレンシアの声だよなと恐るおそる顔をあげて、彼の顔を確認した。彼は金色の瞳に、茶色がかった黒髪だ。鍛えられている体に整った顔だから、ウルフカットがよく似合っている。
「私はアルディア王国王子、グレンシアと申します。お力添え感謝致します」
「いえいえ!? あ、俺は直哉です!」
「直哉さん、余計なお世話でしたら申し訳ありませんが……我々と共に来てはいただけないでしょうか?」
「いや、別にたいした事はしてないし……」
「お礼をしたいのもあります。しかしその、武器もなくこの辺りを歩くとまたゴブリンと追いかけっこになってしまうと思うのですが……」
それは確かにね! 武器も持たないでゴブリンと追いかけっこしてる奴いたら、心配になるよね、普通!
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