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第4話 社畜が異世界に転移④

 ここで断ると、余計に心配をかけるよなぁ。俺でもこんな奴いたら心配になるもん。  正直、今の俺ってだいぶ怪しい奴なのに、丁寧な対応をするグレンシアはお人好しなのか、礼儀正しいのか……。   「じゃ、じゃあ。お言葉に甘えて……」  俺の返事を聞いたグレンシアは朗らかに微笑んで、俺に片手を差し出した。俺は、その手を掴んで立ち上がったんだけど、その瞬間お腹が鳴ってしまう。間抜けな音でお恥ずかしい! 「携帯食のクッキーがあるのですが、食べますか?」 「お願いします……」  なんか、情けないとこばっか見られていて悲しいな! ゴブリンの繁栄のキャラではグレンシアが一番好きだったから、ちょっとやだ。好きなキャラとカッコつけた妄想するのが好きな俺にはツライ展開だぜ!    そんな俺は、本当に城へ招待されてしまった。中世の街並みの奥に聳えるお城はファンタジー世界の象徴だ。本物を拝める日が来るなんて思わなかった。城の中ではメイドさんや執事さんがずらっと並んでいる。湯浴みを進められたので、大人しく受け入れた。  あんな森でさ迷っていたら臭うだろうし、ご迷惑だよな!  案内されたのは大浴場で、グレンシア専用のお風呂だ。こんな見ず知らずの怪しい奴に自分の風呂を貸してくれるなんて、グレンシアは本当に良い奴だなあ。  髪と体も洗って、よしと湯船に浸かっていたら甘い香りがして、気持ちがいいから寝て意識を失いかけた。疲れていたんだなって横を見ると、あれ? 「お疲れ様です」 「どうも……」  なぜか、グレンシアさんもお風呂に居るんだけど、そうか。自分の風呂にいつ入ろうと自由だし、浴場は広いし、当たり前か。俺は平静を失う事なく、のんびり過ごす事にした。   「直哉さんは少し髪が長いですね」 「ああ、うん……」  社畜は散髪にすら行けないのよ。仕事が忙しいと自然と長髪になってしまう。てか、俺の仕事大丈夫かな? いや、大丈夫か。社畜の代わりなんていくらでもいるしなぁー。  俺は空しく天を仰いだ。    まあ、会社の事なんてどうでもいいな。  それよりも! さっきから俺、グレンシアに対してそっけない返事しか出来てないんだよ。ゲームのキャラと話すとか緊張するし! イケメンだし、王子様だし、強いし、筋肉すごいし! それに比べて俺は陰キャだしな!  だけど、グレンシアは全く気にしていない様子で、むしろ控えめではあるが楽しそうにしている。 「きれいな黒髪ですね」 「まあ、俺の故郷では普通というか……」 「髪を伸ばしているという事は、男性がお好きなのですか?」 「……」  このゲームそんな設定があったのか! 男性向けエロゲーなのに、BL要素が!? そんなの知らなかったよ! 時間無くてヘアカットに行けなかっただけなのに! 「失礼、立ち入った事でしたね」 「いや、いいんだ」  完全に誤解されているのはよくないけど、ムキになって否定してもドツボにハマる気がする。この世界でそうなら、それに従った方が不自然じゃないだろう。いや、男色趣味はないんですけどね!

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