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第7話 王子様の誓いのキス③

 グレンシアの起床時間というのは本当だったようで、執事さんが部屋に入って来て着替えを手伝い始めた。グレンシアは慣れているから平然としている。  俺は着替えを人前でするだけで落ち着かないのに、至れり尽くせり着替えさせられるのは、庶民にはちょっと困るんだよな。 「こんな立派な服を借りてしまって、すまない」 「その服は直哉さんの物です。自由に扱ってください」 「そ、それはさすがに申し訳ないよ。この服の分まで俺が何かできる訳じゃないし」 「ジュリアを守って下さるのでしょう?」 「それは、もちろんだけど……」  厚意を無下にするのもよくない。何か貰った時は遠慮しないで素直にお礼を言うのがいいと聞いた事がある。相手の気持ちもあるし貰う事に罪悪感を抱くのはむしろ失礼なのかもしれないな。   「その、ありがとうな。こんな素敵な服を貰った事がなくて、尻込みしたんだ」 「よかった、お気に召さないのかと思って少し心配しました」 「そんな訳ないだろ」 「いえ、直哉さんは不思議な衣服を着ていらしたので……」  ああ、スエットね! 確かに異世界じゃ謎過ぎる服装だ。ただの寝間着なんだけどね! 「あれはーただの部屋着なんだ。寝ようとしていた所でゴブリンに襲われてな」 「それは不思議なお話ですね」  グレンシアは笑いを堪えきれないようだ。そりゃ冗談に聞こえるよね! 自分で言った後に変な事言うなって思ったよ。遠くの土地から来たよそ者が昼間っから森で寝ようとしていて部屋着って意味わからんもんね!  そもそも、異世界人だってバレたらどうなるんだろうか? 歓迎されないのだとしたら、俺を拾ったグレンシアに迷惑をかけてしまう。もっと気を付けないといけないな。

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