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第14話 貴方に出会えてよかった②
「本日の定食はハンバーグステーキ、小鉢が3つにトウモロコシのスープ、ライスになります」
まさかの洋食と和風のミックス! ハンバーグとコーンスープに小鉢が野菜のおひたしや和え物なんだけど? これがこの世界の普通なのか、転生者がこのメニュー作ったのかわからないけど元の世界とあまり変わらない食事ができそうだな。
「この国の食事は俺の故郷とそう変わらないな」
「では、この店のオーナーは直哉さんと出身が同じなのですね」
なんか、これが普通じゃなかったらしい。ここのオーナー、ほぼ転生者だと確定したぞ。もしかして、転生者って珍しくないのかな……もしも、ゲームをクリアして『異世界に転生しますか?』に『する』をクリックした全員が転生してたとしたら恐ろしい事だ。
あのゲームの製作者が黒幕なのか? てか、俺だけ転移者なのか? んまあ、考えても分からんよな。
どうにもならない思考を横に置いて、俺はさっそく小鉢に手を伸ばす。3つ目の小鉢には俺の好きなみかんとパインのシロップ漬けが入っていたのだ。この定食、珍しいセンスだなとは思うが、ありがとう。美味い、やっぱり甘いものっていいよな、コンビニスイーツがなければ激務をこなせなかった俺にとって甘味は最大の活力剤だぜ!
「グレンシア、どうした?」
「あ、いえ、ハンバーグに添えてあるピーマンなんですが、炒めてあるので……」
「炒めてると苦手なのか?」
「はい、煮てあれば食べられるのですが」
「じゃあ、俺にくれよ」
「では、こちらもどうぞ」
グレンシアはみかんとパインのシロップ漬けを俺にくれた。一番に手をつけていたし、美味しそうに食べていたから好物だと分かったんだろうな。甘やかし王子には甘えておこう。
「ありがとう」
「いえ」
「ふふっ、ピーマンが苦手なんて、子供みたいで可愛いな」
俺はつい笑ってしまった。
馬鹿にしたと思われてたらどうしよう!? グレンシアは照れた様子で目を伏せている。怒ってはいなさそうだけど、貴族や王族って相手に恥をかかせるとダメなんじゃなかったっけ?
「ご、ごめん」
「違うんです。ちょっと嬉しくなってしまって」
嬉しい!?
「どういう事?」
「なんでもありません。冷めないうちに食べましょう」
グレンシアが何を考えていたのかさっぱりわからないが、ハンバーグが冷めたら大変だ。肉じるじゅわー! に肉の旨味は熱々だからこそだろ!
切り分けたハンバーグを口に入れ噛んだ瞬間、舌の上で肉汁が溢れ濃厚な肉の香りが鼻を抜けた。混ぜ込まれたマスタードが肉の香りと調和していい仕事をしている。
ハンバーグにするくらいだから挽肉用の部位だと侮っていた。香りの強すぎるステーキにするよりもハンバーグにして香辛料などで香りを抑えた方が食べやすいし、濃厚な味わいの料理になる。
「ゴブリン……また……どうにかしてくれないかね」
近くのテーブルの会話が耳に入ってきた。ゴブリンを誰か討伐してくれないかと嘆く商人たちの会話だ。きっと行商をしたり仕入をれするのにも命がけなんだろう。俺はただの社畜だし、戦いにおいて1人じゃ何もできない役立たずだ。力になれなくてごめん。
あれ? でも、俺ってグレンシアと一緒にゴブリン退治の戦場に行くんだっけ?
「ぐ、グレンシア……あのさ」
「はい」
「俺もゴブリン討伐に行くのかな?」
「……無理をする必要はありません。命懸けの事ですから、覚悟が出来た者だけが行けばよい事かと」
「そうか……」
「でも、直哉がいてくれたら絶対に倒せる気がする」
グレンシアが距離を縮めてきた。その事で心にほわっと何かが灯る。
「お互い仲良くなったよな」
「そうですね」
またグレンシアがはにかむから、心の灯りがあたたかくなってしまう。その正体が何かは分からない。いや、きっと社畜時代に誰にも頼りになんてされず仕事だけ押し付けられてきたから、グレンシアの言葉が嬉しかったんだ。
「でも、直哉さんって呼ぶ方がしっくりきます」
「どっちで呼んでもいいよ」
「はい」
またそうやって、はにかむ! 俺はグレンシアの笑顔に弱いのだろうか?
俺は、なんだか恥ずかしくなってハンバーグの残りを食べ始めた。
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