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第21話 初めての従魔と俺の使命②
「むぅはここでも枕な。違う枕じゃ寝られそうにないよ」
「きゅい」
その夜はグレンシアの部屋の隅に簡易ベッドを作ってもらい寝る事にした。許してもらえなくても仕方ないけど、常にグレンシアの傍に居て守りたい。
グレンシアは俺の方を気にしているようだけど話し掛けては来ない。綺麗な顔にクマを作らせた原因が俺というのは本当に罪悪感しかないが、3日前の俺にとってはあの選択が精一杯だった。
後悔しても仕方がない。過去には戻れないのだから。
「グレンシア、おやすみ」
「おやすみなさい」
無視したりもせず、部屋に入る事を許してくれる優しいグレンシアは、きっと傷つきやすい。優しい人ほど、繊細な心を持っている。
25歳の社会人でそんな事も忘れ、配慮した行動もとれないなんて、恥ずかしいよな。人を傷つけるなんて、無知で感情のままに行動する子供みたいだ。
「ごめん……」
そっと、呟いてから目を閉じる。頭の下のむぅは不思議なくらい眠気を誘う。ぷにっとした感触を感じながら、俺の意識はあっという間に眠りに落ちて行った。
「きゅいきゅい」
目を開けると、むぅが触手のように伸ばしたぷるっとした手で俺の頬を叩いている。むぅを枕にして寝たはずだったのにむぅが俺の上に乗っているという事は、俺は寝相が相当悪いのだろうか? 久しぶりのベッドで、気が抜けたかな。
いや、意識がはっきりしてみれば……俺はグレンシアに抱きしめられている。なぜかグレンシアのベッドの上で、抱き枕にされているのだ。
「グレンシア……」
……これは、このままでいないとグレンシアがまた悲しくなるんだろうか?
抱き枕にされるくらいなら、まあ別にいいか。俺は目を閉じて2度寝に入った。グレンシアの香りがする、鍛えられた体を感じてなんだか恥ずかしい。
そんな事を考えていたからか、グレンシアの夢を見た。
あの夜の続きをしていて、グレンシアと交わる夢だった――。
起きるとグレンシアは居ない。よかった、今日の朝勃ち見られたら恥ずかしい気持ちになるって!
なんて夢を見たのだろうか。振っておいてこの有り様は合わせる顔もないくらいだが、切り替えよう。俺にはグレンシアを守るという使命があるんだ。
「きゅいー」
むぅが俺の左手をぺちぺちと叩いてくる。なんだろうと思って、左手をみれば薬指に指輪を見つけた。
「これって……」
この指輪って確か、エルドが売ってた好きな人の気を引ける指輪じゃ……。そういやペアだったから、つけてる人同士でお互いの事が気になるみたいなやつなのかな。って、これが原因か!?
いや、おまじない程度で大した力はないって話だし、どちらかというと仲直りの証かもしれない。
これを俺にくれたって事は、グレンシアが許してくれたって事だ。
心に何かが灯る感覚がした。
これが好きという気持ちなら、俺はどうしたら良いんだろうか?
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