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第23話 仲直りの婚約指輪② ※きす
「ですが……もう、直哉さんがその気になるまで私からは致しません。ですから、傍にいて欲しい」
そうグレンシアは愛を口にした。なんだその、大切にします感は! 女の子になったような気持ちだ。
男が手を出さないから一緒に居てとか本命? 本気? ガチで好きなやつ? こんなアラサー社畜にイケメン王子様がそんなん言っていいの?
もう、頭混乱してるけど、やっとの思いで頷くとグレンシアは嬉しそうに笑ってくれた。
「……グレンシア、ありがとう」
「直哉さんの勝ちですから」
「え、俺の勝ちって?」
「惚れた方が負けというでしょう?」
それならたぶん引き分けなんだけど、恥ずかしくて口に出来なかった。でも、なんとか伝えたくて言葉を探す。
「い、いや、グレンシアが負ける事ばかりでもないと思う!」
「どのような時に私は勝てますか?」
「笑った時とか」
俺の言葉を聞いたグレンシアは花が咲いたようにはにかんだ。それを見て俺も表情が綻んでいたと思う。グレンシアは笑顔を抑えたいみたいだけど、嬉しさが溢れるのか表情が緩んで仕方ないみたいだ。
俺の言葉1つでこんなに喜んでくれる人はグレンシア以外に居ないだろう。
「グレンシア」
「……!」
俺はグレンシアの唇に軽く触れるだけのキスをした。
「お詫びというか、なんというか、こんなの要らないかもだけど」
「いえ、驚いてしまって……直哉さんは私と触れ合うのが嫌なのでは、ないのですか?」
「どうしてだ?」
「拒否され続けたので……」
どうやら俺の勝手な振舞によってグレンシアの自信を壊滅的にしてしまったらしい。
「俺はずっとグレンシアの事が好きだった……んだけど、ごめん」
「……痛いのがお嫌で?」
「うん、ごめんなさい……」
「無理に抱こうとした私が悪かったのです」
そんなに無理矢理でもないのにそう言ってくれる優しさが胸に刺さる!
「本当にごめんな」
「いえ、もう仲直りです」
そう言いながら、グレンシアは左手の指輪を見せ微笑んでくれた。
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