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第24話 俺は王の妃になるようだ

 食後のコーヒーは香り高くてまろやかだ。久しぶりに食べたまともな朝食もグレンシアと仲直りしたからか、やけに美味しくて俺は幸せな気持ちに浸っていた。  だが、コーヒータイムに事件発生。ジュリアが行方不明になったと、報告が来た。  おてんばお姫様はまた街にお忍びで行ってしまったのだ。俺とグレンシアは慌てて捜索へ加わった。しかし、3時間が経った今、手掛かり1つ無い。城門前を行き交う騎士や兵士、全員の顔が青ざめ始めている。 「グレンシア、こういう事はよくあるのか?」 「ジュリアが突然居なくなる事はよくありますし毎回大騒ぎなのですが、今回は居場所が全く分からず……なかなかに深刻な状況です」 「そ、そうか」    これは、ちょっと問題が大きいぞと困った俺は、いつも何でも持って来てくれるむぅにジュリアを持って来てと頼んでみた。すると、人間より大きいサイズに巨大化したむぅはぼよんと跳ねてどこかへ消えた。まさか、本当に連れて来てくれるのかな? とドキドキしながら待つ。  あれだろ、同姓同名の違う女の子連れてくるとか、全然違う果物やモンスター持ってくるとかだろ? オチは分かってるんだよ。しかし、戻ってこない。どこまで行ったんだ?  むぅを待って空を眺めていたら、城の方から門まで年配の男性が歩いて来た。 「貴様が異世界人という畏怖の存在だから、このような不運に見舞われるのだろう」   「ディアド、口を慎め。宰相という立場でも直哉さんへの侮辱は許さない」    この国の宰相、ディアドという威厳のあるイケオジサマがグレンシアと口論になっている。 「このような畏怖の存在を傍に置いていては、グレンシア様の名誉にも傷がつきますぞ」 「そのような些事で私の立場が揺らぐのであれば、王子とはいえその程度の器であったのだろう」 「……ふん、異世界人などが城に居る事は実に不愉快です」  どうやら異世界人である俺の事が気に入らなくて、グレンシアに苦言を呈しているようだ。  異世界人が本当に畏怖の存在なら仕方ないよな。  畏怖ってのは、自然や神とか人知の及ばない存在に恐れおののくって意味だ。俺をどれだけ過大評価してるんだよって思うけどさ。  町人にすら石をぶつけられるくらい嫌われているんだから、偉い人にはもっと嫌われているんだろうな。  ただの社畜からしたら、畏怖ってむしろ褒め称えられているくらいに感じられる言葉なんですけど。    そんな事を考えていれば、ディアドとグレンシアが空を凝視している事に気が付いた。巨大な影が出来ており、それがむぅだと分かった時には、ディアドはむぅに丸呑み状態ですっぽり覆われてしまっていた。中では呼吸が苦しいらしく、藻掻いている。  むぅの上にはジュリアが乗っており、傷や汚れもない。無事だった様子だ。 「お兄様!」 「ジュリアっ!」  ジュリアはむぅの上から降りて、グレンシアに飛びついた。 「お兄様、私空を飛びました。スライムに乗って空を飛んだ姫はきっと私だけね!」  ジュリアがむぅに乗って空を飛んだのだと嬉しそうに語っている一方、ディアドはむぅの中で苦しそうだ。仕方ないので、むぅに吐き出させた。 「げほっ……ごほ、い……異世界人など処刑だ!」  ディアドはブチギレており、俺への怒りパラメーターがMaxを振り切っている様子だった。  だが、グレンシアが前に出て俺を守る意思を示す。 「彼は将来妃に迎える大切な方だ」  と……グレンシア、もう結婚する気満々なのか!  それを聞いたディアドは怒りを抑え面白くなさそうにして立ち去った。  この国の偉い人なら今後の関係もあるし、俺の為に無理をしているんじゃないかと心配になったのだが。  グレンシアの表情はとても晴れている。 「今後、あのような輩に絡まれれば私が必ず守ります」  と、グレンシアは跪き、俺の手の甲にキスを落とした。  !?  だから、俺はお姫様じゃないよ!?

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