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第26話 息抜きに街で買い物を①
少し息の詰まる出来事が続いた為、グレンシアは息抜きにと隣町への旅行を計画してくれた。
徒歩で片道2日かかり、馬車だと半日くらい。帰りは馬車にして行きはのんびり歩こうか、という話でまとまった。
「直哉さんとの旅行、楽しみです」
「ああ、楽しみだな!」
いつも通り城のダイニングでの朝食、ホーンラビットの極上肉を食べながらご機嫌な俺をグレンシアは微笑ましそうな表情で眺めてくる。
「直哉さんと2人なら、護衛は要りませんね。途中、野宿をしますが大丈夫ですか?」
「野宿なら、むぅと一緒に経験済みだ。何もなくてもむぅが居ればなんとかなるぞ」
「いえ、むぅにとっても休暇ですから、必要な荷物は持って行きましょう」
そう言われるとそうだな。むぅは働き者だし、休みくらい必要だよな。
むぅの様子が気になったのでテーブルの下を覗くと、俺の足元に居たむぅはグレンシアの足へすり寄っていた。グレンシアに撫でてもらえたので嬉しそうにぷるぷるしている。とってもご機嫌そうだ。
気の利かない主より気の利く王子だよな! わかるぞ! でも、寂しいんだけど!
まあ、そういう訳で荷造りをしないといけない。
俺はグレンシアから金貨を1枚を受け取って、物珍しく眺めた。金貨って、金で出来ているのか? 1枚1万円くらいの価値なのかな?
俺たちは必要なものを買い揃える為、街に出た。俺が自由に買い物をできるようにか、グレンシアは遠くから見守ってくれている。
「リンゴが1個鉄貨50枚……物価は半分くらいだから、金貨1枚は実質2万円くらいの予算かな」
リュックは貰ったものがあるから、寝袋と、保存食に水筒、着替えと歯ブラシが最低限、必要なものだよな。貰った靴は立派な革靴だけど、長距離歩く用のブーツとかあった方がいいのかもしれない。
寝袋は銀貨3枚、水筒は銅貨5枚、着替えは上下1着ずつで銀貨2枚だ。城で使っている歯ブラシは高級すぎて野宿で使うのが勿体ないから、手頃なものを買う事にした。歯ブラシは銅貨1枚だった。
残り銀貨4枚と銅貨4枚になった。運よくセール品のブーツがサイズぴったりで、銀貨2枚で買えた。
銀貨2枚とちょっとなら5000円くらいあるし、2日間で食べられる分の保存食を買っても少し余るだろう。
何かグレンシアに買っていこうかな。
「保存食は干物屋でドライフルーツを買おう」
「保存食がお要りようで?」
ドライフルーツがたくさん並んだ露店の主人に声を掛けられた。それがエルドだったのでぎょっとする。
「そんな反応しなくても」
「すまん、知り合いがナイスタイミングでドライフルーツを売ってるものだから、びっくりしたんだ」
「俺は、だいたいの予測はつくんですよ」
「どういう事だ?」
「そのままの意味ですよ」
何か含みがある言い方だと引っ掛かったが、護衛は先を読む力も大事だろうし、彼にとっては当たり前の職務なのだと深く考えないようにした。
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