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第31話 恋人記念にはじめてを贈ります① ※きすというかはじまる

 城に帰って来たので、明日の朝に向けて荷造りだ。横ではグレンシアも荷造りをしている。  むぅはリュックに入らないから、頭に乗せて行こう。オーバースペック過ぎて使わないだろうハイエーテルも一応リュックのポケットにしまった。俺は使えないけど、グレンシアやむぅは使うかもしれないからな。買った物も入れたし、こんなもんかな。  むぅはジュリアに報告してたくさん褒めてもらったので、ご機嫌に寝ている。分厚い座布団みたいにふかふかした布がむぅの寝床らしい。まあ、俺が寝る時にはむぅを枕にするから、夜以外の寝床だ。俺はむぅを撫でながら一息ついた。 「直哉さん」    グレンシアは俺に、腕時計と隣町までの地図を差し出してくれた。 「私の分が余っているので、よかったら」  確かに旅には必要だよな。俺がうっかりしていてもさりげなくフォローしてくれるグレンシアは男前だ。  気負わなくていいように、さっと軽い理由もつけて渡してくれる。気遣いだってわかるけど、こういう細かい優しさってなんか心を掴まれるんだよな。 「グレンシアのこういうとこ好きだな」 「……っ」  今のはついうっかりとかじゃない。  恋人になった記念について、俺は考えた。  俺には贈り物をするお金がない。お金がない以上は労力で贈り物をする事になるだろ? だから、俺からグレンシアをベッドへ誘おうと思ったんだけど……。どうすればいいか、わからないから……ひたすらに好きって言ってみようかなって。 「す、好き……だ」 「……あ、ありがとうございます」  なぜか沈黙が流れる。グレンシアは恥ずかしそうにそっぽを向いている。もっと、俺から近寄らないといけないのかな。 「グ、グレンシアの香水好きだな」  そう言って、グレンシアに顔を近づけてみた。だが、グレンシアは俺に触れて来ない。  ど、どうすれば?  そうか! グレンシアに気が付いてもらうには、グレンシアと同じ誘い方をすればいいんだ。  俺はグレンシアのベッドへ腰かけて、隣をポンと叩いてみた。だが、それを見たグレンシアは口とお腹を押さえて震えている。おそらく、笑いを堪えているのだ。 「な、なんだよ!」 「す、すみません……可愛すぎて、悶えています……」  可愛いって……!  確かに、イケメン王子からしたら25歳で童貞の俺は可愛いのかもしれんが、馬鹿にしてるだろ! 「は、はじめては誰にだってあるだろ、馬鹿にするなよ!」 「馬鹿になんてしていません」  グレンシアは俺の隣に座って、触れてきた。 「私もはじめてなんです。本気で誰かを愛したのは……」    グレンシアは俺の唇を親指で撫でる。頬に触れている指の感触がくすぐったい。 「今日は、恋人になった記念日だから、俺からの贈り物は、そのっ……」 「……一番嬉しいです」  グレンシアは俺を優しくベッドに倒して、口付けをしてきた。舌は入ってくるけど、舌や指も丁寧に俺に触れてくる、じれったいくらいソフトタッチな愛撫をされて、感度が高まっていった。

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