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第33話 嫉妬の変数は女?①

 甘ったるい夜だった。溶けてしまうかと思うくらい愛された。  俺はベッドの端っこで目を覚ます。寝相が悪いわけではない。昨日の夜、熱冷ましにグレンシアから離れて寝たんだ。本当に溶けたら困るからな! 「グレンシア?」  隣に居たはずのグレンシアの姿が見当たらなくて、寂しい気持ちに襲われる。小さな子供になったようだ。依存し始めている自分に嫌な気持ちを持った。  はじめての恋人だけど、依存して束縛して愛情を試して、なんて事にはなりたくない。  グレンシアと今まで通り対等な恋人で居たいから、薄暗いような気持ちは必要ないんだ。深呼吸して、自分に言い聞かせる。 「25歳で人に依存したくは無い。自立してないとさすがに恥ずかしいぞ、俺! 女の子じゃあるまいし!」  両手で頬を叩くと、着替えてダイニングへ向かった。 「グレンシア!」  でも、愛しい事には変わりない訳で!  俺は席に着いているグレンシアを後ろから抱きしめた。首元に顔を埋めれば香水の香りがする。彼の髪が頬に触れるだけで存在を感じ、嬉しくなってしまう。 「直哉さん、急に大胆ですね」 「う……だ、だって」  うん、浮かれているんだよなあ! はじめての恋人だからって年甲斐もなくはしゃぎ過ぎかな? 「とても嬉しいのですが、2人きりの時の方がよろしいかと」 「え?」  ジュリアとアルテッドが同じテーブルで紅茶を嗜んでいる! き、気付かなかった……! 「大人2人が視界から消える程、御執心になったとはどういう風の吹き回しだ?」 「あ、アルテッド……お前、わかって言ってるだろ」 「私は全てを見通せるわけじゃない」  グレンシアと愛し合ったわけよ!  俺の心の声にアルテッドはうわっという顔で黙った。うん、わかるぞ、人の色恋沙汰とか興味ないどころか引くんだろ? 「興味が無い事は否定しないが……ジュリア様、昨日グレンシア殿と直哉が致したそうです」 「まあ!」  いや、なぜジュリアに告げ口したんだ!?  ジュリアはなんか嬉しそうにニコニコしている。女の子だし、恋愛話が好きなのかな。 「ジュリア……」  グレンシアはなんか呆れているような諦めているような顔でジュリアの名を呼んだ。

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