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第35話 ゴブリンに襲われるとか!?①
綺麗な空が広がる明け方、旅立ちをジュリアとアルテッドが見送りに来てくれた。彼らに手を振って、前を向けば城門外には草原が広がっている。控えめな日差しが降り注ぐ晴天の中、風に吹かれて進む事になりそうだ。追い風だからすいすい進めるのが面白い。なんというか、気持ちがいいな。
むぅは楽しいのかぽよぽよ先を進んで、蜂や蝶を見かける度に追いかけて遊んでいる。むぅが道を逸れる度にグレンシアがむぅを回収して正しい方向に進ませるのだ。
「むぅと一緒に居るとジュリアの小さな頃を思い出します」
「なんか、想像がつくな」
「ふふっ、今でも困るくらいお転婆ですからね」
「きゅいー!」
「むぅ、そっちには崖しかないですよ! 落ちてしまいます」
「きゅ?」
むぅはまだ赤ちゃんなのかこの調子で手がかかる。鑑定したらベビースライムって書いてあったんだよな。頼りになるから忘れがちだけど、まだ親が必要な年頃だ。俺とグレンシアで守ってやらないと!
2人で子育てをしているような気分だ。気が早いもはやいんだけど……!
「きゅいっ」
「こっちに進みましょうね」
「きゅ!」
ふふっ、まだ町を出たばかりだけど、グレンシアとむぅとの旅は楽しいな。どこに行くかより誰と行くかって言葉の意味が分かる。
なんて考えていたらグレンシアにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
グレンシアは驚いたように気遣ってくれる。
「直哉さん、近道をしましょうか」
と、グレンシアはむぅを崖下に落とした。膨らんで大きくなったむぅの上へ降りる事になったが、怖すぎる!
「無理! 崖下10Ⅿはあるぞ!?」
「平気ですよ」
グレンシアにお姫様抱っこされると、そのまま崖下に落ちた。
「うわああああっ!」
ぼよん!
下のむぅでワンクッション置いて地面に着地したグレンシアは俺の顔を見て笑う。すごい顔になっている自信は確かにある。
名物ジェットコースターの10倍は怖いよ!
「直哉さんは高い所が苦手だったんですね」
「いや、そういう問題じゃないぞ」
「ふふっ」
グレンシア、わかってやってるだろ! こんな恐ろしいからかいはやめてもらいたい……。
「私は直哉さんを守る王子でありたいんです」
「だ、だからって自分から危険に飛び込まなくても……嬉しいけどさ」
「きゅ!? きゅいーきゅいー!」
なぜかむぅの声が崖下から聞こえる。むぅだけさらに下の崖下へ落ちてしまったらしい。しかも、なぜか木の幹にすっぽりハマって動けない。蝶々でも追いかけ落ちて、上手い具合にハマってしまったのだろう。
「2、3分で戻ります。直哉さんはここで待って居て下さい」
グレンシアは俺を地面に降ろすと崖を下ってむぅを救出に行った。
少し回り道をして戻って来るというので待つ事になる。ほんの2、3分だからと俺とグレンシアは安心していたのだが……。
じゃり。
ギギギギギギッ!
嫌な音が耳に入った。しかも至近距離だ。
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