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第38話 ゴブリンに捕まったんだが②

「……なんだこれは」 「!?」  ゴブリンに降ろされた先で、男性の声がした。ゴブリンじゃない? なんか聞き覚えのある声のような気がする。 「なんで、男を連れて来たんだ? 女だと? 冗談を言うな」 「もしかして、ジアンか?」 「……ほう、わかるか。面白いし、いいだろう、お前を招待してやる」 「しょ、招待?」  ジアンは俺から麻袋を取った。  薄暗い洞窟のような場所で、微かに女性の息が聞こえる。苦しんでいるような、もがいているような、声にならない声だ。 「好きなだけ遊んでいけ、転生者のよしみだ」  俺は転移者だ。ジアンは転生者なのか? 訊けるわけもなく、黙って周りを警戒しながら立ち上がった。  遊んでいけって事は……。エロゲーだし、やる事は1つだろうけどさ。ゲームでさえ1度も抜けなかった俺に、ゴブリンに囚われた女性で遊べとは難易度の高い要求だ。  だからって、ジアンに対して抵抗する力も、被害女性を助けてやれる力もない俺はどうしたらいい?  絶望感が胸を支配し始める。けど、ここでジアンに従って女性に手を出したらグレンシアに合わせる顔がない。生きて帰れた所で、そんなんじゃ意味がないだろっ!  はい、カッコつけました……。俺の息子が萎んで使い物にならないんだよ! ゴブリンに囲まれたこの状況で、興奮できるメンタルの奴いたらむしろすごいだろ!? 「俺、帰りたいんだけど……」 「お前、ゲイなのか?」 「いや、俺のメンタルが無理だと言っている」 「和姦ものが好きなのか……」 「恋人がいるんだ」 「……! まさかの、リア充だとぉ……」  俺も陰キャだからわかる。オタクのリア充嫌いの地雷は面倒くさい。 「相手は男だけどね!」 「やはりゲイなのか」  ここはもうゲイなんで許して下さいと言うしか……。いや、俺は男が好きな訳じゃないんだけどな。 「まあ、ゴブリンどもがお前を女だと言うからな。取り敢えず剥くぞ」 「帰してくれないのか?」 「は?」 「同じ転生者なのに」 「……」 「っ!?」  ジアンは怒った顔で俺に覆いかぶさると顔を掴んできた。 「命乞いする人間は嫌いだ。惨めな姿でさえも生きながらえようとする姿が、イラっと来るのだ」  お、俺……殺される?

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