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第39話 ゴブリンに捕まったんだが③ ※えってぃはじまる
目の色を変えたジアンが鋭い爪を俺の首に立てる。少し気が変わったらしく首を掴んで締め上げ始めた。切り裂かれるよりはいいが、苦しいっ!
俺がこんな所で居なくなったら、グレンシアはまたクマを作って悲しんで……辛い目に遭うかもしれない。
俺は死ぬわけにはいかない……グレンシアの元に戻らないと……。
視界が滲んで、息が苦しくて、何も考えられない。生理的な涙が頬を伝った。
――その時、ぽわっと俺の体を光が包んだ。
「直哉さん!?」
「けほ、けほっ! ……っは、ぐ、グレンシア!?」
俺の居る場所は洞窟じゃない。グレンシアと過ごしていたキャンプ地だ。ジアンやゴブリンの姿はなく、傍にはグレンシアとむぅだけがいた。
「俺、なんでここに」
「指輪に転移結晶を埋め込んでいたんです」
「転移結晶?」
「離れていてもすぐに相手を召喚できるマジックアイテムにして、この指輪を贈らせて頂きました」
そんな効果を付与してくれていたのか……!
「ありがとう、助かった……」
体の力が抜けて、俺は仰向けに寝転がった。グレンシアは、はっとした顔で俺の首に指を添える。
「直哉さん、首に怪我をしています……!」
「ああ、ちょっとジアンにな」
「ゴブリンの長と一緒だったのですか!?」
「うん、なんか本拠地に連れて行かれちゃって」
「……」
グレンシアの顔は青ざめている。それもそうだよな、一歩間違えたら死んでた……。
「ぎゅいーぎゅいー」
なんか、むぅがすごい声で鳴いて体から涙だと思われる液体を飛ばしている。俺はむぅに手を伸ばして撫でた。
「むぅのせいじゃないよ」
「ぎゅうー……」
むぅを撫でている間に、グレンシアは俺の首にポーションをかけてくれた。
「もう、痛む所はありませんか?」
「大丈夫だ」
「……乱暴をされたのでは」
「いや、全然!」
「……」
暗い表情で俯いているグレンシアは、たぶん誤解をしている。だからって女性を抱けと言われた事は口が裂けても言えないし、あの状況の説明の仕方が分からん。
「ちゃんと、見せて下さい」
「へ?」
「怪我をしているのに無理をしないで下さい」
「いや、怪我はしてな……」
「私は気にしません。むしろ、直哉さんが……あんなに嫌がっていた痛い事を我慢している方が辛いので、ポーションを使わせて下さい……痛みはすぐに無くなりますから」
ゴブリンたちに無理やり犯されて、怪我をしていると思っているらしい。グレンシアの表情は深刻だ。
「お、俺は顔と首を掴まれただけでっ! まだ、服も剥かれてなかったし! ほら、服着てるだろ!?」
「まだ……ですか」
「あ……」
恋人が襲われかけた事を気にするなという方が無理だ。わかるぞ、でも。気にされると恥ずかしいんだけど!
ショックを受けて俯くグレンシアになんて声を掛ければいいか分からない。
取り敢えず、手持無沙汰の俺はむぅをよしよししている。するとむぅは泣き疲れて眠ってしまった。
「むぅ、布団引いてやるからな」
むぅを寝かせて、グレンシアの様子を窺う。
「……グレンシア、ごめん」
「なぜ、謝るのですか?」
「俺が勝手な行動をして、連れ去られて、心配させてさ……ごめん」
「直哉さんが無事なだけで私は……」
グレンシアは俺の頬に手を添えて、顔を近づけてきた。
「直哉さんが嫌でなければ……安心させて欲しい」
「……グレンシアが安心するなら、なんでもするぞ!」
――そ、それが青姦であってもな!
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