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第41話 完璧王子様と俺がっ
「ぐ、グレンシア、もう降りるよ」
「いえ、街までは無理をしないでください」
「でも……」
お姫様抱っこのまま3時間歩き続けて、ついに街が見えてきた。
「もう少し、こうして居たいのは私の我が儘です……許して頂けますか?」
グレンシアはエロゲーの脇役王子のはずなのに、少女漫画に出て来そうな王子様全開だ! 恋愛フィルターが掛かっているのかわからんけど、俺の王子はもはや何を言ってもイケメン過ぎる!
「俺も、こうしているのは、嫌じゃない……」
「よかった」
お姫様抱っこという顔が間近になる状態で、微笑まれてしまうとこちらは赤面する他ない。青姦なんてもんをかましてしまい俺の脳内はお花畑と化しているのだ。
「ついたー!」
俺は地面に降りると万歳で喜んだ。旅をして目的地に着くのは達成感があって楽しい。
しかしふと、町の入り口に死んだ目をした女性が立っている事に気が付く、女性は唄を口遊みながらどこかへ行ってしまった。
「ゴブリンに攫われて仮に生還しても、あの様になります……」
グレンシアが小声で教えてくれた。あの女性はゴブリンの被害に遭って、精神が壊れてしまったのだろう。
ジュリアの顔が浮かんで、ゾッとした。あんなに明るくておてんばで、優しいジュリアがああなっていたらと思うと怖くて仕方がない。
「ジュリアを守れて良かったよ」
「直哉さんが被害に遭わなくて良かった」
「え?」
「もうお忘れですか?」
そうなんだよな、俺はこの世界では女判定なんだよ。男なのにゴブリンの手籠めにされるかもしれないという意味不明なステータスを持っている。
「俺は心配ないよ。グレンシアが居てくれるし」
「ですが、直哉さんもむぅも自由気ままなので。心配です」
「その件については反省しています……」
「きゅい……」
勝手に迷子になる俺と、護衛を頼まれたのに遊びに行っちゃうむぅの信用は無いに等しいよな! わかるぞ!
「すみません、私が心配ばかりしていては、直哉さんの負担になりますね」
「そんな事ないぞ」
「そう、ですか?」
「嬉しいよ。そういうのって、その、俺への愛情だと思うし……あっ!? いや、なんだろうな! 俺恥ずかしい事言って!」
「むぎゅっ!」
腕の中にいたむぅを力いっぱい握ってしまい、むぅは痛がって鳴いた。
「ご、ごめん、むぅ」
「ぷきゅー……」
グレンシアが、ふっとはにかんで俺の好きな笑顔がまた咲いた。
この街は城下町ほどではないが栄えており、魔法関連の店がたくさん並んでいる。そこでMP最大値のアップさせるポーションを見つけたので、たくさん買い込んだ。俺の弱点を補う素晴らしいアイテムだ。
「ごめんな、ポーションたくさん買ってもらっちゃって」
「いえ、必要なものですから」
「俺のMPがもう少し多かったら要らない出費だったしさ」
「直哉さんへの贈り物以上に有意義なお金の使い道はありませんよ」
「そ、そうか」
俺の甘やかし王子は、こういう事をサラッと言えるんだ。俺にはもったいないくらいの恋人だと思って止まないな……。
「俺からも何か贈れるものがあればいいんだけど」
「では……」
「?」
「直哉さんのすべてを下さい」
「!?」
こ、こんな言葉を笑顔で言えるなんて……イケメン王子おそるべし!
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