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第47話 想い人と炎の刃①

 一夜の宴が終わると、国は戦争の準備で忙しくなった。いつ、襲撃が来るかは未知数だが、相手には知恵があり無暗に襲い掛かっては来ない。それ故に、作戦をどう立てるかが課題だ。  俺といえば、そんな作戦会議に出席する事は無い。昨日のグレンシアとの性行為で重たくなった腰をむぅに揉んでもらいながら、ベッドへ横になっているのだ。  むぅに揉まれると楽になる事を発見した俺は、もう1時間はこの状態でいる。 「むぅからはマイナスイオンみたいな癒し効果が出てるのかも」 『あるじ、きもちいい?』 「気持ちいぞー! むぅ、腰の下、尻の方も頼む」 「ダメです」 「グレンシア!?」  俺の横に立って、冷たく見下ろしてくるグレンシアと目が合った。  尻の方という言い方が良くなかったかな? 服の上からだし、揉んでもらうだけだし、いいじゃないか……? 「なんか、ごめん……」 「いえ、むぅについては警戒しなくてもいいのですが……万が一、むぅが誤って何かをして、直哉さんがそれを気に入ってしまう事はあり得ますから、一応止めたのです」  そ、それって……。いや、むぅで想像したくないから、考えるのはやめよう。    グレンシアは俺の上からむぅを取ると膝の上で撫でた。その横顔は優しい王子様だ。嫉妬した時だけ、冷たい目をするって事なのかな? なんか、ドキッとするんだよな、冷たい顔されると。   「むぅは働き者ですね。あとでジュリアからお菓子を貰いましょう。今、クッキーを焼いているそうです」 『やった~! おかしぃ!』 「グレンシア……会議どうだった?」 「アルテッドと私は城から指揮を飛ばします。しかし、エルドが最前線へ行くので、なんだか……」 「エルドと仲がいいのか?」 「直哉さんに無礼を働いた者と仲が良いと思いますか?」   「ですよね……」 「アルテッドと親しいようなので、アルの心配ですよ」 「そ、そうか」      ゴブリンとの総決戦の音が城内に響いている。戦争準備が完了した王国では、こちらからゴブリンを攻撃する方向で話がまとまった。  エルドは魔法騎士団の団長として、すでに最前線へ発ったようだ。最後の別れになるかもしれないから、少しくらい挨拶したかったけど、グレンシアに睨まれたくないから黙っていた。  アルテッドとその父ディアドは兵の指揮にあたるので、城から伝達魔法を飛ばしている。親子揃って、第一印象が悪いけど相手を認め態度を改めてしまえば、2人ともいい人だ。  ジュリアも守りたいしな! 全力を尽くそう!    とはいえだ。ここで出会った人たちを守りたい気持ちは逸るけど、王子が最前線へは行けない。俺はグレンシアから離れる気がないから、城に留まるしかない。 「無事に帰って来い……」  時折、瞳を閉じて呟くアルテッドはエルドの事を言っているのだろうか。それを見る度に、俺とグレンシアが最前線へ行くべきだと思ったんだ……。

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