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第48話 想い人と炎の刃②

 頭を潰した以上、この戦争は残党狩りだ。そのはずなんだが、ただのゴブリンすら知能を有しており、集団勝負では苦戦が強いられる。  翌日、前線壊滅の知らせが届いた。  ――エルドは行方不明。 「ただ死体が上がっていないだけかもしれないな」  アルテッドは無表情で瞳を閉じた。彼の手は握られていて、震えている。  アルテッドにとって、大切な人だったのだろうな……。ただ、俺の中でエルドは死んで居ない。彼は、おそらく転生者、もしくは転移者だ。しかも、この世界のプログラムを理解しているとしたら、この世界の神にも等しい。そんな存在が簡単に戦死するだろうか? 「……それで、本当に死んで居たら」 「アルテッド?」 「私が悲しんでいるのは、あいつがこの世界に必要な。不可欠な者だと思っているからだ」 「特別な力を持っているから?」 「そうだ!」  ……好きなのかな。 「違う!」  心の声筒抜けなんだから、しょうがないだろ! 「誰があのような恥ずかしい奴を好きになるものか」  恥ずかしい? 「うるさい……」  アルテッドは悲しそうに俯いた。冗談を言える話でもないよな……。俺は死んでないと思うけど、実際は分からない。   「俺、エルドを探しに行くよ。転移者のよしみだ」 「は、はあ!?」  俺とグレンシアは前線へ行く事を志願し、アルテッドも手を上げて3人の少数班で挑む事になった。  兵は居るだけ足手まといになる。兵士全員にオールアップは使えないからだ。この世界の魔法にはクールダウンというちょっとした制約がある。 「おい、探しに行くのは反対しないが……スライムに呑まれるのか!?」 「大丈夫だって、かなり酔うけど」 「……くっ」  アルテッドは渋々、むぅに呑まれた。むぅのおかげであっという間に最前線だ。  巣を目の前にした森の中で戦いが始まる。  グレンシアとアルテッドにオールアップを掛けて、ゴブリンはどんどん一掃されていく、しかしレベル600を超える超巨大な亜種ゴブリンがどんどん出て来た。奴らはめまいがする程の異臭を漂わせており、屈強な体と頑丈な皮膚を持つ。 「これが、エルドたち魔法騎士団が壊滅した要因か……」 「アルテッド、このまま行けるか」 「殿下に続きます」  さすがに一掃とはいかない。一体一体倒していかなくてはどうにもならない。  相手の体力を削っては倒すを繰り返す。    ポーションを使いながらの持久戦だ。     「っあ!?」  アルテッドの足を死体だと思っていたゴブリンが掴んだ。バランスを崩して、彼は防御が出来なくなる。むぅに助けに行くよう命令するが、間に合う訳もない。大柄なゴブリンの爪が振り上げられた瞬間。  ――ゴブリンの首が炎の刃で飛んだ。 「エルド……の魔法……」  アルテッドは目を見開いて呆然としている。  草むらから放たれた魔法の元を見れば、ガサッとエルドが顔を出した。  彼は血と土で汚れている手をアルテッドに差し伸べる。 「命が惜しいので脱走して隠れてましたー! いやー殿下たち遅いですよー!」  エルドは笑顔を作るとあっけらかんと言ってのけた。 「こ、この――っ!」

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