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第51話 常識的な神様と俺①
近くの街に着いた頃には、夕日が沈もうとしている。エルドが宿を取って来てくれたが、あまり大きい街でない事もあり、宿屋が少なくてどうしても4人部屋だという事だった。それに対して、グレンシアは不満な様子だ。
どうする事も出来ないし不満を口にはしないが、王子様のご機嫌が宜しくないのは全員が察していた。たぶん俺のせいなんだろうな……。アルテッドやエルドも俺の着替えとか寝姿には興味がないから大丈夫なんだけどな。
「恋は盲目というからな……」
さすがにアルテッドも頭が痛いらしい。守り敬う王子様のご機嫌が悪いのだ。それが自分たちへの不信感というのは従者としてつらい。出来た王子だから、口に出さないのが救いだけれども、変な誤解をされているのは嫌だろう。
そんな空気の中、エルドは約束通り散歩へ誘ってくれた。俺には、エルドに訊きたい事が色々とある。元の世界に帰る為とかじゃなくて、むしろこの世界で生きる為に訊いておきたい。
「グレンシア、少しだけエルドと散歩をして来る」
「……」
「こ、これは、グレンシアと暮らしていく為に必要な知識を得る為なんだよ」
俺はグレンシアの耳元でそう囁くと、不機嫌王子様に笑い掛けた。安心して欲しいんだけどな!
「っ……わかりました」
グレンシアはむぅを抱き締めて、俯いている。なんか子供みたいに拗ねている王子様が可愛くて、吹き出しそうになりつつ笑いを堪えた。グレンシアを完全無欠の王子様だと思っていたが、嫉妬したり拗ねたり愛らしい所がちゃんとあって、俺としてはきゅんとするぞ。
「では、行って参ります。大丈夫ですよ殿下、俺は女性が好きですから」
「……」
王子様としてはエルドの言葉は信用できないんだろうなあ! グレンシアはエルドを睨みながら送り出してくれた。
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