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第55話 寝坊貴族と甘味処①

 ◇  翌朝、俺の頭の下で震えるひんやりとした感触で目が覚めた。 『あるじぃ、むぅこわい』 「むぅ、まだ明け方だぞ」 『ねむれないよぉ』  むぅは安心できないみたいで、怯えるようにぷるぷるしている。  ゴブリンは倒したから脅威はないんだよと言っても、赤ちゃんスライムには理解が難しいらしい。おそらく直感的に怖いって感覚なんだと思う。むぅにトラウマを与えてしまったのは反省だ……。あんなゴブリン亜種のオンパレードじゃ、ドラゴン1体倒した時の100倍は怖かったよな。 『あるじぃぃ、ごぶりんさん、こわい』 「もう、みんな倒したから、大丈夫だぞ」 『ふえぇぇぇんっ……』 「むぅ様は、まだ回復されないんですねぇ」 「エルド、ごめん。起こしたか」 「城には魔法で吉報が届いているわけですし、俺たちはのんびり休暇気分でいいんじゃないでしょうか」 「ごめんな……」 「今日は服でも買いに行きましょう、湯浴みができる場所もありますよ」 「! そ、それは魅力的だな」 「ふわあ……」  アルテッドが俺たちの声で目覚めたのか体を起こして、瞼を擦る。欠伸をして、背伸びをした。 「甘いものを食べに行こう……」 「アルテッド様、お好きですもんね」  そういえば、昨日この2人って何してたんだろう。夜遅くまで帰って来なかったけど。 「……なにもしてない、殺すぞ」  寝起きのアルテッドは機嫌が最悪なんだな、気を付けよう。 「……直哉さん」 「グレンシアも起きたか」 「……今日は……街を巡りましょう、小さいですが一応この街は観光地ですし……楽しめるかと」  ふふっ、寝起きのグレンシアも隙があって可愛いなあ。 「もってなんだ……お前、私に喧嘩を売っているのか……」  アルテッドさん、寝起きヤクザになってますよ? 「うるさい、私はもうひと眠りする……」 「直哉様はご存じないでしょうが、アルテッド様は朝がとっても苦手なんですよ」  そう説明したエルドは少し楽しそうだ。  アルテッドって普段はしっかりしてるのに抜けた所もあるんだな。  眠るのが最優先なのかアルテッドからの反論はない。  とても平和な朝だ。窓を開けると、朝の冷えた風がぶわっと入ってきてカーテンを強く揺らした。

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