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第56話 寝坊貴族と甘味処➁

「なんで、アルテッドはグレンシアにおんぶされてるんだ?」  朝食を食べようという話になって部屋を出たんだが、アルテッドがおんぶされているので俺は思わず突っ込んだ。 「アルテッドはいつもこうなので、寝たまま連れて行きます」 「エルドがおんぶすればいいだろ」 「アルが嫌がると思うので……」  王子様におんぶされる貴族の方が問題じゃないのか? 「直哉様、嫉妬ですかぁ?」 「そうじゃないけど、おかしいだろ普通に」 「アルテッド様は王家の血を引く貴族です。殿下とは幼馴染であり気さくな仲ですので、問題ないかと」 「で、でもっ」 「じゃあ、直哉様がおんぶしたらどうです?」 「……」  エルドの提案はもっともだ。  しかしさすがに、男1人おんぶすると重いな……。  しかも寝ているから、背中にずしっと圧が掛かる。 「直哉さん、大丈夫ですか?」    ……別にやきもちを焼いたわけじゃないけど、王子様の仕事ではないだろ、どう考えてもさ! 「大丈夫だ!」 「つらくなったら言って下さいね?」 「気にするな、大丈夫だから!」 『あるじ、がんばれ……』  むぅは俺の足元をぽよぽよと跳ねて応援してくれる。むぅも少しだけ落ち着いている時間が増えた。油断するとすぐ泣きだしちゃうんだけど、他に意識が向いている時は大丈夫みたいだ。   「んしょ!」  宿の目の前にはおしゃれなカフェがある。そのテラス席にアルテッドを降ろして俺は一息ついた。アルテッドはすぐテーブルへうつ伏せになって寝息を立てている。  俺たちも椅子に座ってメニューを開いた。

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