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第57話 寝坊貴族と甘味処③
「アルテッド様はパフェにケーキ、アップルパイですかね」
「うむ……」
いや、朝飯とは思えないな!
アルテッドは甘いものに釣られてか、むっくっと起き瞼を擦ったが、またテーブルに頭を載せて寝始めた。なんという筋金入りの寝坊すけでしょう……。ここまで来ると本当にすごいなあ!
「直哉さんもデザートにしてみては? ここは甘味が美味しいお店らしいですよ」
「うーん、それなら、パンケーキかな」
店員が運んで来たのは、鮮やかなフルーツがちりばめられたスイーツの数々だ。宝石みたいと言えばいいのか、美しいトッピングに、ここが高級店である事を知る。
「グレンシア、支払いが……」
「後ほど、従者が支払いに来ますから大丈夫ですよ」
ここでも、後払い可能なのか! なんか、コンビニ後払いくらい気軽なんだな……。
「んっ! んっ、ごはん!」
「アルテッド様、パフェのアイス溶けちゃいますよ」
「……もぐ」
アルテッドは半分寝た状態でパフェを食べ、寝ては、食べを繰り返している。
寝ながらパフェ食べてる人初めて見た……。
しかし、どのお菓子も元居た世界と変わらないな……もしかすると、このカフェも転生者もしくは転移者がオーナーの店だったりするのだろうか?
「異世界人は嫌われていますけど、ごはんは美味しいって評判なんで、みーんな飲食店をやるんですよ、直哉様」
「そ、そうなのか……俺も自立できるかな」
「直哉様、料理はお得意で?」
「まあ、一人暮らしだったし、ハンバーグとか和え物とかそれくらいの物は作れるよ」
「!」
グレンシアが興味津々な顔をしている?
「……」
「直哉様、それはぜひグレンシア様に食べて頂かなくては」
「そうか、そうだよな! 俺もグレンシアに食べてもらいたい」
「エルド、今すぐ厨房を押さえて来るのだ」
「はっ!」
食事中なのに、エルドは厨房へ行ってしまった。
「グレンシア、そんな急がなくても」
「いえ、あれもエルドの仕事です。直哉さんはお気になさらないでください」
人に命令するのは王子様からしたら普通なんだろうけどさ、エルドはまだ飯を食べてるんだぞ? 俺なんかの料理の為に、悪いなって思うんだけど。
「楽しみ、なのか?」
「当然です」
きっぱり言われて、ちょっと照れる。
「俺が作る料理なんてたいしたものじゃないんだ」
「直哉さんが作ったものは特別です」
「グレンシア……」
そういえば、幸運の押し花も消えちゃったもんな。あの時みたいに、グレンシアにたくさん贈り物がしたい。料理も思い出って意味ではいい贈り物だ。ちょっと、こう恋愛気分に浸っちゃうよな!
テーブルの上ではエルドの残したケーキをむぅがもくもくと食べている。
『あるじぃ、このあまいふわふわおいしいね』
むっちゃ可愛いなー残り物だと思って食べちゃったんだな?
「エルドには新しいケーキを注文しておこう……」
むぅは、ぽよっとアルテッドの分まで食べ始める。
「んぐっ」
『うわあ!』
それを間近で見ていたアルテッドはむぅを捕まえて枕にした。
「――まだ寝るのかよ!」
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