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第59話 温泉で恋人のふりを①
食事が終わると、服を買って温泉へ行く事になった。
服は貴族の装いっていう感じのをエルドが全員分買って来てくれた。俺のサイズを知ってるなんてこの世界の創造主すげえってなったんだが、グレンシアは特に疑問を感じてないっぽい。王子様にとって従者が優秀なのって当たり前なんだろうな。
「紐……パンッ……」
顔を赤らめたアルテッドがエルドを蹴りだした。
「なんですぅ? 痛いですよ、アルテッド様」
アルテッドにだけセクシーな下着を買って来たんだな。わかるぞ。
「ええ!?」
俺はファンタジー世界を甘く見ていた。温泉が混浴なのだっ! 元の世界でもあるにはあったが、異世界の混浴とか、エルフの女性が居たらどうしよう!?
「直哉様、心配しなくても可愛い種族の女の子は居ないですよ。現実、可愛い子が混浴になんて入らないですからね……」
「ですよねー……」
わかってたけど、くっ……残念だ!
そうだよなぁ、いやらしい目で見られたら嫌だもんね。そういうマナーのない男がいるんだよな、バレないように見るのが作法なのに!
すごい、じとーとした目でアルテッドが俺を見ている。
いや、これは男として当然の範囲だからな!
「というか、直哉は見られる方だと思うが?」
「へ?」
「黒目黒髪で髪が長いからな」
異世界転移の王道だもんな……黒目黒髪がモテるみたいなの。
「アルテッド様と直哉様は髪が長いので気を付けて下さいねー」
そうか、髪が長いのって男が好きですよのアピールになっちゃうんだっけか!?
俺は恐る恐るグレンシアを窺う。案の定、不機嫌な目で辺りを警戒しているから、入場口の店員は恐れ固まっている。王子様のご機嫌を損ねたと思っているんだろうな。
「グレンシア、一緒に風呂とか懐かしいな」
「! そうですね」
「あの時はグレンシアに髪が長いとか言われるから、ちょっと緊張してたけど」
俺がこの世界に来たばかりの頃の話をしたらグレンシアの機嫌は戻ったみたいで、店員さんもほっとした様子になった。
「直哉さんは私から離れないで下さいね」
「うん、わかってるって」
いや、こんな風に肩を抱き寄せられると、恋人ですって感じがして恥ずかしいな!
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