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第62話 この先には結婚がある①

 ◇  朝起きると、なぜかアルテッドとエルドが1つのベッドで寄り添うように寝ている。服は着ているし、まさかグレンシアと同じ部屋に居ながら何かあったわけじゃないと思うんだけどな! うーん、謎だ……。 『あるじぃ、おはよう』   「おっ、むぅ、どうだ? 大丈夫になったか?」 『うん、だいじょうぶだよ』 「お城まで飛べるか?」 『むぅがんばる』  むぅが頑張ってくれると言うので、俺たちは街から出て草原まで来た。 「むぅ様、美味しいもの食べて温泉にも入って楽しかったんですねぇ」 『うん、またあそびにきたいなあ! んしょ!』  むぅは俺たちを呑み込むと、ぼよんと高く跳ねて城まで飛んだ。   「う……」 「これはハードです……」  城の広場に着いた。吐き出されたアルテッドとエルドは激しいめまいと吐き気でダウンしているが、グレンシアは相変わらず涼しい顔だ。……かく言う俺も、目を回している。 「グレンシア様、おかえりなさいませ」 「ディアド、御苦労だな」 「姫様の結婚式も2週間後です故、少しでもお傍に居て差し上げてください」 「そうだな」  出迎えてくれたディアドの言葉で、ジュリアはもうお嫁に行くのか……と、寂しい気持ちになった。 「この度の功績でアルにも良い婚姻が決まるだろう、なんと幸いな事か」 「……父上」  そうか、貴族だしアルテッドが政略結婚をするのは当たり前の事なんだよな。  で、でも! 今朝の2人を見た俺としては、反対だっ。 「アル、どうした? 浮かない顔をして、お前も姫様のように恋愛結婚などと言い出すか?」 「いえ、国や家の為になる結婚が一番です」 「……」  ディアドは固まっている。……な、なんだ? 「アル、どうした? 父上に隠し事か」 「いえ」 「……結婚は嫌か」 「そのような事はありません」 「お前は無理をしている時、目線を下げる癖がある」 「……」  ディアドは俺が思っていたより100倍は良い父親のようだ……。息子が無理しているのを察したうえ、結婚を無理強いするつもりも無いらしい。正直に打ち明けない息子を気遣いながら、どうしたものかと首を傾げるばかりだ。 「ディアド様」 「エルド! アルがこのようになる時は大事なのだっ、向こうで何があった」 「……それは」 「父上」  エルドの言葉を遮ったアルテッドはディアドと向き合う。下唇を噛んで俯く息子の姿にディアドはおろおろとする。 「父上は、私が男性を好むのはご存知のはずです……」 「もちろんだ、女性と結婚する必要はないぞ」 「本当は、男性も好まないのです」 「……そうか」 「申し訳ありません」 「人の心が分かれば、人間不信になるのも仕方のない事だ……無理はせずともよい」  彼らを見ていて、俺は気が付いた。ディアドが、俺の事を畏怖の存在だと嫌っていたのは……大切な人がいるからこそだったんだな。   「俺はディアドさんを誤解してたよ」 「ディアドは親馬鹿ですからね」  グレンシアは俺にくすっと笑った。

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